【MLB】シャーザー獲得はレンジャーズの勝利? デッドラインは“超売り手市場”

写真:レンジャーズにトレードとなったマックス・シャーザー@Getty Images

日本時間30日、レンジャーズはメッツからマックス・シャーザーを獲得したと各種報道機関が報じた。

シャーザーのトレードには乗り越えるべきハードルも多かったが、2球団はデッドラインを数日前にして合意に達した。

シャーザーの年俸はメジャー最高給の4333万ドルで、今季の残りだけでも1533万ドルを残す巨額であり、さらにシャーザーの契約にはシャーザー自身が選択権を持つ来年のプレイヤーオプションが付いていた。

潤沢な資金を持つメッツはクリエイティブに動き、シャーザーの年俸を負担する3500万ドルをレンジャーズに送る代わりに、『MLB.com』のランキングで44位にランクインするルイスアンヘル・アクーニャ(ブレーブスのアクーニャの弟)というプレミアムな有望株を獲得することに成功した。

トレード成立の報が出た段階では、シャーザーが来年のプレイヤーオプションを行使してレンジャーズに残るのか、それとも破棄してFAとなるのかは分かっていなかったが、ほどなくして『ESPN』のジェフ・パッサン記者が「シャーザーは来年もレンジャーズに残る」旨をツイート。

これで、レンジャーズはシャーザーを今年の残り期間と合わせて1.5年確保できることが明らかになった。

トレード全体で見れば、レンジャーズは非常に良く立ち回ったといえるだろう。

トレードデッドラインは売り手の数が少なく、また最近いくつかの売り手が撤退したことで“売り手市場”の傾向は強まっている。

エースのマーカス・ストローマンを売りに出すかと見られていたカブスは目下8連勝と破竹の勢いでプレーオフ圏内に迫っており、買い手に回る可能性が高くなってきた。ブレーク・スネルのトレードが取りざたされていたパドレスも、レンジャーズ相手に連勝を記録し、明日シーズン初の3連勝をかけてスネルが先発する予定だ。パドレスは負け越しているながらも、簡単に売り手には回らないだろうと噂されており、この好調のままスネルをキープするかもしれない。

トレード市場に残る先発投手はカージナルスのモンゴメリーとフラハティ、タイガースのロレンゼンらいささかインパクトに欠ける面々。それを考えれば、早い段階でTop100レベルのプロスペクトの放出も辞さずに先発2~3番手級のジオリトやシャーザーを獲得したエンゼルスやレンジャーズは、他のコンテンダーに対して優位に立てたといえるだろう。

シャーザーは今季防御率4.01と不振だが、投球内容は実際の投球よりも良く、そしてプレーオフの経験は誰より豊富な頼れるベテランだ。年俸の大部分をメッツが負担して、1.5年働いてくれるならば、レンジャーズにとって美味しいムーブといえる。

ルイスアンヘル・アクーニャは非常に高い評価を受ける有望株だったが、彼の守る二遊間には長期契約でマーカス・セミエンとコリー・シーガーが居座り、今季はイゼキエル・デュランも台頭していたという状況。アクーニャがトレードの駒となる可能性は高かった。

もちろん、メッツもこのトレードに負けたわけではない。

売り手市場に乗じて、成立は難しいように思われていたシャーザーのトレードに成功し、有望株を獲得。金銭の大部分を負担したものの、それでも2000万ドル以上は浮く計算になる。総年俸4億ドル以上の銀河系軍団は今季こそ奮わなかったが、素早く売り手に回ってベテランをトレードして有望株を獲得する方針に転換。来季以降のリベンジのために狡猾に動いている。

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