渦巻銀河に取り込まれつつある矮小銀河 ダークエネルギーカメラで撮影

こちらは「エリダヌス座」の方向約5500万光年先の渦巻銀河「NGC 1532」です。NGC 1532は地球に対して真横を向けた位置関係にある、いわゆるエッジオン銀河のひとつ。奥の方に見える渦巻腕(渦状腕)は反り返るように歪んでいますが、これは中心部のすぐ上に写っている矮小銀河「NGC 1531」との重力を介した相互作用の影響によるもだといいます。

【▲ 渦巻銀河「NGC 1532」と矮小銀河「NGC 1531」(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; R. Colombari, M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】

画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、NGC 1531はやがてNGC 1532に取り込まれると考えられています。両銀河の相互作用は双方の爆発的な星形成活動を促しました。また、2つの銀河からはガスと塵が流出しており、まるで銀河と銀河をつなぐ橋のようになっているといいます。

NGC 1531とNGC 1532は、大きな銀河が小さな銀河の星々や星の材料を取り込むことで成長・進化するプロセスのワンシーンを示したスナップショットのようなものだとNOIRLabは解説しています。同様のプロセスは天の川銀河でも過去に6回起きたと考えられていて、その痕跡は銀河円盤を球状に取り囲むハロー(銀河ハロー)と呼ばれる領域に恒星ストリームなどの形で残されています。

このような大小の銀河どうしの相互作用は、似たようなサイズの銀河どうしの相互作用とは異なります。サイズが同程度の渦巻銀河2つが衝突すると大変動が起こり、全く別の銀河として生まれ変わると考えられています。天の川銀河も約40億年後にはアンドロメダ銀河(M31)と衝突・合体して、最終的に1つの楕円銀河が誕生すると予測されています。

冒頭の画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データ(可視光線と近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されたもので、NOIRLabから2023年7月25日付で公開されています。ダークエネルギーカメラはその名が示すようにダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、画素数は約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影することができます。当初の目的であるダークエネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。

Source

  • Image Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; R. Colombari, M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
  • NOIRLab \- Dark Energy Camera Captures Galaxies in Lopsided Tug of War, a Prelude to Merger

文/sorae編集部

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