劇団NLT 「ザ・フォーリナー」上演中 ど田舎の民宿、外国人がやってきた?!

劇団NLT「ザ・フォーリナー」が上演中だ。
39歳で早逝した作家・ラリー・シューの傑作戯曲、タイトルの「ザ・フォーリナー」、「フォーリナー=外国人」のこと。物語の舞台はアメリカ南部ジョージア州の田舎。
演出はグレッグ・デール。1964年に公民権法が成立、翌年、選挙権法も成立し、選挙権に対する保護を定めた。南部中のアフリカ系アメリカ人は直ぐに選挙権登録したが、20世紀、初めてジョージア州からアメリカ合衆国議会にアフリカ系アメリカ人議員を送り出すまでには数年を要した。また、1966年、レスター・マドックスがジョージア州知事に選ばれたが、彼は自分の経営するレストランに入ろうとしたアフリカ系アメリカ人の公民権示威運動者を脅したことで名声を得ていた。そんなことからもわかるように人種差別の根強い地域であることが歴史的な経緯でも頷ける。コメデイの部類ではあるが、実は様々な問題を含んでいる。
ここは民宿、壁を見るとかなり年季が入っているような、だが、どこか温かいぬくもりのある民宿。フロギー(海宝弘之)はここの常連、宿の女主人ベティ(葛城ゆい)とはタメ口な仲。そんな彼がチャーリー(桑原一明)という友人を連れてきた。フロギーとは正反対、恥ずかしがり屋であまり人とは話したくない。チャーリーはコートを着てスーツケースを手に。緊張の面持ち。

だが、フロギーは仕事で一緒にはいられない。動揺しているチャーリー、フロギーにナイスな考えが浮かぶ。それだったら外国人、ということにしとけばいい、安直な発想に思わず笑いが。女主人、外国人と聞いてテンションが妙にアップ。「見たことがない」何か珍しい動物みたいな反応。チャーリーの独白「27年間書類整理」「僕はつまらない人間」という、かなり自己肯定感が低い。

陽気な女主人、民宿なので、ここを訪れる人も、もちろんいる。婚約しているカップル、キャサリン(吉越千帆)&デビッド(小泉駿也)彼は牧師、キャサリンの弟・エラード(大槻千草)、明るくお茶目な少年、彼がチャーリーに英語を教えるくだりは、思わず微笑んでしまうし、キャサリンは自分の悩みをチャーリーに打ち明ける。それというのも彼が”外国人”だから。不動産鑑定士のオーウェン(川﨑敬一郎)、ちょっとダークな空気感、デビッドと何やら…。平和な田舎民宿で、何かが起こる!!

思いつきな”外国人”なりすましが思わぬ効果を。オープンで屈託のないエラードの笑顔と分け隔てのない態度にチャーリーの心がほぐれていく。また、個人的な悩みを打ち明け、心が軽くなっていくキャサリン、チャーリーは自分が誰かの役に立っている、と感じ始める、自分にも何かできるかもしれない、という朧げな希望。また、ジョージア州という土地、チャーリーがデビッドに国籍と言語を尋ねられる、チャーリーの”返し”に注目。そしてアメリカといえば、人種差別問題、2幕では、これがクローズアップされる。”外国人なりすまし”は、この田舎では少々危険。そこは劇場で。ちょっとサスペンス風な展開、ドキドキ、そこを知恵と勇気とハッタリで!チャーリーやエラードの活躍に注目。

そして時々登場する、この”設定”の張本人であるフロギーも要所要所で活躍。軍人という設定で、お堅いかと思いきや、気のいいおっさん風情がホッとするキャラクター。
コメディに定評のあるNLT、超ベテランの海宝弘之の軽やかさと葛城ゆいの気のいいおばちゃんがなんとも温かく、大槻千草のエラードがキュート、オーバーオールがよく似合うし、この物語の要のキャラ・チャーリーを演じる桑原一明が愛嬌たっぷり。ダークなイケメン・デビッド、最初は優しそうな感じだったが、少しずつ本性を見せていく過程を小泉駿也がきっちりと、オーウェンは怪しさ満点、そして後半にトンデモ・キャラが炸裂、川﨑敬一郎がちょっとドスを効かせて。

このラリー・シュー、不慮の事故で若くして他界しており、この「ザ・フォーリナー」と「ザ・ナード」の2作品のみ、だが、世界中で上演されており、もっと長生きしてたら、と思う。公演は8月6日まで。
NLT公演、12月13日より、「二階の女」、原作は獅子文六、脚本は飯沢匡、演出は鵜山仁。

あらすじ
アメリカ南部ジョージア州の田舎、湖のそばにあるさびれた民宿が舞台。
常連客フロギーが、恥ずかしがり屋の友人チャーリーとやってくる。フロギーは仕事で数日出かけるが、チャーリーは周りの人と話したくない。そこでフロギーは、チャーリーを外国人として紹介し、彼に言葉は通じないから話しかけないで、と出かけていく。宿の女主人や、訪れる町の人たちは初めて見る外国人に対して興味津々。
言葉が理解できないと思われたチャーリーは、彼らの様々な内緒話を聞く事になり、予想もしなかったハプニングが!!!ユーモアたっぷりのコメディをお届けします。

概要
日程・会場:2023年8月2日(水)~6日(日) 池袋・シアターグリーンBOX in BOX
キャスト
フロギー 海宝弘之
ベティ 葛城ゆい
チャーリー 桑原一明
オーウェン 川﨑敬一郎
エラード 大槻千草
デビッド 小泉駿也
キャサリン 吉越千帆
スタッフ
作:ラリー・シュー
翻訳:小田島恒志
演出:グレッグ・デール
美術デザイン:松野潤
照明プラン:宮永綾佳
音響プラン:小林史
衣裳デザイン:伊藤早苗
舞台監督:竹内一貴

問合・予約 https://forms.gle/qtqcrQAa4xmwZcbR8 03-5363-6048(平日11~17時)

ティザー動画
https://youtu.be/ZKIJ7sKpnF4

公式Twitter:https://twitter.com/nlt_seisaku

舞台撮影:古元道弘

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