NASA小惑星探査ミッション「Psyche」探査機に太陽電池アレイ取り付け 打ち上げは2023年10月予定

こちらは打ち上げ準備が進められているアメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査ミッション「Psyche(サイキ)」の探査機です。2023年7月25日(現地時間)、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター近くにあるアストロテック・スペース・オペレーションズの施設でPsyche探査機本体への太陽電池アレイ取付作業が行われました。【2023年8月4日13時】

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査ミッション「Psyche(サイキ)」の探査機への太陽電池アレイ取付作業の様子。2023年7月25日撮影(Credit: NASA/Kim Shiflett)】

Psycheは火星と木星の間に広がる小惑星帯を公転する小惑星「プシケ」(16 Psyche、最大幅280km)の周回探査を目的としており、低コスト・高効率な探査を目指すNASAの「ディスカバリー計画」14番目のミッションとして2017年に選定されました。打ち上げにはスペースXの「ファルコン・ヘビー」ロケットが用いられます。

プシケは鉄やニッケルといった金属を豊富に含む「M型小惑星」に分類されていて、その正体は初期の太陽系で形成された原始惑星のコア(核)ではないかと予想されてきました。過去に探査機が接近して観測した小惑星や彗星は主に岩石や氷でできていたため、Psycheは金属質の小惑星を間近で観測する初のミッションとなります。地球のコアを直接調べることはできませんが、原始惑星のコアだった可能性があるプシケの観測を通して、地球のような惑星の形成についての貴重な情報が得られると期待されています。

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)のPsyche探査機の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/Arizona State Univ./Space Systems Loral/Peter Rubin)】

Psycheはもともと2022年8月1日~同年10月11日のウィンドウ内に探査機を打ち上げる予定で準備が進められていましたが、地上試験で用いられるソフトウェア試験用のテストベッド(試験用の環境やプラットフォームのこと)で問題が見つかったため、2022年6月に打ち上げが一旦見送られました。現在、Psyche探査機の打ち上げ目標日時は日本時間2023年10月5日23時38分に設定されています(打ち上げウィンドウは2023年10月25日まで)。

NASAのジェット推進研究所(JPL)によると、Psyche探査機には5枚のパネルを十字型に配置した太陽電池アレイが2基搭載されています。展開後の面積は2基あわせて75平方メートルで、1基あたりの寸法は長さ11.3メートル・幅7.4メートル。太陽電池アレイを拡げたPsyche探査機の幅は、テニスコートの縦方向の長さとほぼ同じ24.7mに達します。

【▲ Psyche探査機への太陽電池アレイ取付作業の様子(動画・英語)】
(Credit: NASA/Glenn Benson and Cory Huston)

巨大な太陽電池アレイの発電能力は地球近傍では21キロワットですが、地球よりも太陽から遠い小惑星帯では2キロワット強まで低下するといいます。それでも、プシケまでの飛行を担うホールスラスター(キセノンを利用した電気推進システム)をはじめ、探査機本体のシステムや観測装置などの電力需要を満たすのに十分なのだそうです。

JPLによると、2023年8月中旬には推進剤であるキセノン(合計1085キログラム)の充填作業が開始される予定だということです。2023年10月に打ち上げられたPsyche探査機は2029年7月にプシケに到着し、26か月間に渡って周回探査を実施する予定です。

【▲ 小惑星プシケ(奥)を観測するPsyche探査機(手前)の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)】

※本稿ではPsycheの日本語表記について、小惑星はラテン語の読み方である「プシケ」、NASAのミッションおよび探査機は英語での読み方である「サイキ」を用いています。

Source

  • Image Credit: NASA/Kim Shiflett
  • NASA/JPL \- Huge Solar Arrays Permanently Installed on NASA’s Psyche Spacecraft

文/sorae編集部

© 株式会社sorae