王道セダンをあえて選ぶハズシ技 メルセデス・ベンツ 新型「Eクラス」を読み解く

今年4月に発表されたメルセデス・ベンツの新型「Eクラス」の日本上陸が待ちどおしい。競合車であり、長い時間をかけ切磋琢磨してきた歴史のあるBMWの新型「5シリーズ」も翌5月に発表され、年内にはいずれもショールームに姿を見せるはずだ。

SUVブームの真っただ中の昨今、標準的なセダンは影をひそめているものの、視点を少し変えれば、今やセダンの最新モデルは一周回って“他人とカブらないハズシ技”といえる独特のポジションを確保した、という見方もできるだろう。

Eクラスは今回で6世代目。とはいえ、それは「Eクラス」という名称になってからの話であり、実際にメルセデス・ベンツのミディアムサイズセダンの歴史は戦前までさかのぼる。今回のモデルチェンジのキーポイントとなっているのは電動化だ。

フロントマスクはやや分厚くなったように感じられるものの、先代からの流れをくんだ王道スタイリングにまとめられている。BEV(電気自動車)のEクラスである「EQE」はツルッとした“水滴”のようなボディだが、新型Eクラスは幾分エッジが立ち、静かな威厳をたたえたスタイリングになっている。

フロントグリルが艶っぽい面になっているEQEに対し、Eクラスはネット状になっており、ひと目で内燃機関搭載モデルであることがわかる。床下にバッテリーを搭載するため、先代に比べて2センチ弱ほど全高がアップしたが、セダンらしい低めのスタイリングは健在だ。

ヨーロッパ市場向けのラインアップはMHEV(マイルドハイブリッド)と、PHEV(プラグインハイブリッド)。「E200」は直列4気筒のガソリンターボエンジン、「E220d」は直列4気筒のディーゼルターボエンジンで、いずれも23psの駆動用モーターを備えたMHEVとなっている。

上位モデルとなる「E300e」や「E400e」は直列6気筒のガソリンターボに、129psの最高出力を発揮する駆動用モーターが組み合わせられている。床下に搭載している25.4kWhのバッテリーにより、EVモードでは95~115kmほどの距離を電動走行できるという。

これだけの距離を電力だけで走行できれば、PHEVの模範的な使用パターンである「平日は奥様の“足”として電気で走り、週末はご主人がハイブリッドで長距離をこなす」というメリハリの効いた使い方が可能だ。

平日の買い物や週末の遠出はいつも決まった経路を走り、旅先で充電することも厭(いと)わないというオーナーなら、静粛性が高いEQEも視野に入ってくるはず。一方、充電するのはもっぱら自宅で、近郊のゴルフ場のみならず色々な場所に出かけたいオーナーは、旅先で充電を気にせずに済むPHEVが正解だと思う。日本に導入されるパワートレーンのラインアップに注目したい。

また、BEVやハイブリッドモデルにも、当代最高レベルの安全装備「ADAS(先進運転支援システム)」が搭載されることが最新モデルの魅力のひとつだ。静かなEV走行とディストロニックプラス(自車速追従機能付ACC)による安楽クルーズは、ゴルフの帰りの渋滞を懸念するゴルファーにとっては不可欠な機能といえるだろう。

Eクラスと5シリーズの勝負はこれまでと同様に拮抗(きっこう)しそうだ。各々の評価に目を通し、実車をチェックしてから決めることをおすすめしたい。

Text : Takuo Yoshida

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