ザ・ベストテンのディレクターが語る!もしプリンセスプリンセスがレコード大賞に出ていたら  音楽性とアイドル性も兼ね備えた不世出の女性バンド、プリンセス プリンセス

「ザ・ベストテン」最後の2年間、スターはプリンセス プリンセス

TBSの音楽番組『ザ・ベストテン』、私が担当した87年から番組終了する89年、番組にとっても最後の2年、その最後のスターがプリンセス プリンセスであり、最後の大ヒットが「DIAMONDS」と「世界でいちばん熱い夏」である。

プリンセス プリンセス―― 通称プリプリ、1983年女の子だけのロックバンド “赤坂小町” としてデビュー。バンド名は、当時所属したレコード会社が赤坂にあったことからつけられたと言う。しかしヒットにはつながらず、バンド名を “ジュリアンママ” に改名するなど、苦難の時代が約3年間続いた。

そして1986年、“プリンセス プリンセス” に改名し、CBSソニーから再デビュー。事務所もシンコーミュージックに移籍して大々的に再スタートを切る。

どちらかというとアイドルかと思わせるような女の子たちの本格的な演奏

この頃、当時流行のベイエリアにあった「インクスティック芝浦ファクトリー」というライブハウスでコンベンションが開かれる。私が彼女たちと初めて会ったのもその時である。およそロックとは無縁そうな、どちらかというとアイドルかと思わせるような女の子たちが、演奏、サウンドは本格的、圧倒的な迫力と演奏力に大いに驚いたことを記憶している。当時、女性だけのバンドなど日本にはほとんど居なかっただけにその登場は衝撃的であった。

メンバーはボーカルの奥居香、活発で元気な女の子という印象。ギターは中山加奈子、最もロックアーティスト的なビジュアルでカッコいいギタリスト。ベースはリーダーの渡辺敦子、落ち着いてしっかり皆をまとめる頼もしいリーダー、キーボードは今野登茂子、清楚で大人っぽい美人、男子に人気があった。ドラムは富田京子、きょんちゃんの愛称でキュートで皆に愛された。

このコンベンションで、後に大ヒットする「世界でいちばん熱い夏」も演奏したが、当時はヒットには結びつかなかった。しかし彼女たちの存在は私の中でとても気になる存在として心の中にしっかりと刻まれたのである。

番組最終回の9月29日までランクインを果たした「世界でいちばん暑い夏」

そして1989年1月、女性バンドとして初の武道館コンサートを開催。4月に「Diamonds」を発売、オリコン1位、ミリオンセラーの大ヒットとなる。同時に2年前に出した「世界でいちばん暑い夏」も大ヒット。

『ザ・ベストテン』では、「Diamonds」が5月11日初登場、6月29日には第1位、7月20日には2曲同時にランクイン、「世界でいちばん暑い夏」は、番組最終回の9月29日までランクインを果たす。まさに12年間の『ザ・ベストテン』の最後のスターであり、大ヒットとなったのである。ちなみに、今も多くの人に親しまれている「M」は、「Diamonds」のカップリングであり、当時『ザ・ベストテン』でも歌われてない、ファンにしか知られてない曲だった。これが後にプリプリの代表曲となるのだから不思議なものである。

賞レースには基本参加しない方針プリプリが日本有線大賞を受賞

そしてこの年の年末、「Diamonds」は、日本有線大賞に輝いた。実は、彼女たちは、紅白もレコード大賞も辞退していて、賞レースには基本参加しない方針だった。しかし粘り強く交渉を重ね、「有線大賞はデータのみで選ばれるもので、一人一人の有線リクエストの積み重ねであり、本当に大衆に支持された曲だ」ということで、快く有線大賞だけ出演してくれたのだ。

有線大賞は、それまでの十年間、小林幸子、細川たかし、都はるみ、テレサ・テンなど演歌歌謡曲しか獲ってこなかったので、この受賞は画期的なことであった。郵便貯金会館の会場には来れなかったが、コンサート先からの生中継で、大賞のメダルを首にかけた彼女たちは本当にうれしそうだった。あの笑顔を今も忘れることができない。

この曲は、89年のオリコン年間シングルチャートでも1位になった曲であり、大賞受賞は当然と言えば当然の結果だったと言えよう。

プリプリが辞退した「日本レコード大賞」の大番狂わせ

ちなみに、彼女たちが辞退した『日本レコード大賞』は、Winkの「淋しい熱帯魚」が受賞したが、大方の予想は美空ひばりの「川の流れのように」だった。大みそか生放送と同時に開かれた最終審査会の土壇場でWinkに決まるという大番狂わせ。委員会も二分する大混乱となった。

翌年からレコード大賞が演歌歌謡曲とポップスの2つの大賞に分かれるきっかけとなってしまった。もしレコ大にプリプリが出ていたら全く違う結果になっていたかもしれない。

翌年以降も快進撃は続き、日本で最も成功した女性ロックバンドとして音楽史に名を刻むスーパーバンドになってゆく。しかし1996年13年間の活動に終止符を打ち解散。

音楽性とアイドル性も兼ね備えた不世出の女性バンド

そして2012年、東日本大震災の復興支援として1年間だけ再結成、11月には武道館でコンサートも行なった。久々の武道館公演も全く変わらない素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。

終了後、楽屋に挨拶に行き、久々に昔話に花を咲かせた。岸谷香は昔を懐かしみながら「あの有線大賞、忘れられないいい思い出です」と、そして「本当に出てよかった。今思えばレコード大賞も出ればよかったなあ」とほほ笑んでいた。

そう、君たちがレコ大に出ていたら歴史が変わっていたかもしれないよ。

プリンセス プリンセス―― 音楽性とアイドル性も兼ね備えた不世出の女性バンドであり、『ザ・ベストテン』そして昭和の時代の最後に咲き誇った満開の花でもあったのだ。

カタリベ: 齋藤薫

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