【おんなの目】無知の罪

 草や切った木々を積み重ねている一画が庭の隅にある。整理しようとゴミ袋に入れていたら、太いミミズが這い出てきた。おお、ミミズよ! 久しく見ていなかったので思わず声が出た。ミミズはくねくねと身をよじり、隠れ場所を探している。気持ちよく寝ていたのにごめんなさいね。ミミズの上に落ち葉をかけてやった。うん? ミミズは寝ているのではなく仕事をしていたのではないか。せっせと土壌を耕していたのではないか。ミミズのいる土地は肥沃と聞いた。ならばミミズは沢山いた方がいい。私の庭にいっぱい欲しい。ミミズは、二つに切っても二匹に再生するというではないか。もう一度ミミズを取り掌に載せた。早い動きで這いまわる。これを切る? 柔らかい感触のミミズ。切ることなんてできないわ。暗い陰に放してやる。見ている間に柔らかい土に潜り込んだ。

 ミミズの名前を知りたくて、ミミズのいる土の中の生き物の本を読んだ。ミミズは、陸棲大型貧毛類フトミミズ。貧毛だって。土壌は糞により肥沃になる。そうそう。耕起に弱い。致死温度は、25度から40度。えっ、今日は35度。それに半分に切ったら片方は死ぬと書いてある。

 もう少しで干からびさせ、半分にするところだった。我が庭のミミズよ、無知の私を許してほしい。

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