なぜトップを使う?「ヤル気のある魚ほど、でかい。バスは下より上方向の視野が広い」

フィールドのタフ化が叫ばれ、フィネス隆盛の昨今。手駒は日々確実にマイクロ化が進みつつある中で、時代に逆らうかのように己の道を突き進む者がここにいる。その名は、小林知寛。国内最高峰トーナメントにおいて常に上位に名を連ね続ける猛者だ。そのボートデッキには、トップウォータータックルが常に並んでいる。

●文:ルアマガプラス編集部

― 【Profile】

― 小林知寛(こばやし・ともひろ)

1980年9月10日生まれ(42歳)、岡山県出身。右投げ・Bait左/Spinning左巻き。
スポンサー:エバーグリーンインターナショナル、ベイトブレス、ガンクラフト、GLデザインラボ、Kカスタム、ストラット。2023トップ50ゼッケンNo.7。

[主な戦績]
2003JBⅡ旭川/2005JBウェスタン旭川/2010&2013JB旭川A.O.Y.
2010JBマスターズA.O.Y.
2017JBトップ50A.O.Y.
JBプロ戦・通算13勝(トップ50の3勝含む)/JB史上8位タイ記録

“でかい魚だけ”で5本を揃えるために

「あの試合は、4日間のプリプラクティスで霞ヶ浦をエレキで一周しましたね。ほとんどエンジンは使ってない」

こう語り始めたのは、昨年2022年、国内最高峰トーナメント・JBトップ50第4戦霞ヶ浦で、見事に自身3度目の最高峰戦優勝を飾った小林知寛選手。当時を練習時点から振り返って、冒頭の通りに語り始めた。

この試合、小林選手が世の耳目を一手に集めたのは、その実にストロングな戦略だった。

主軸となったルアーはポッパー、ノイジー、そしてバズベイトの強力トップウォーター3布陣。9月初旬、まだ夏の余韻を残す開催時期。剛腕を突き上げて魅せた最終日の大逆転劇は圧巻で今なお語り継がれる。

「1日あれば、エレキで北利根川の出口から和田辺りまでの西岸を巡ることができるんですよ。翌日はそこまでエンジン移動して西浦一帯、次は東浦、続いて東岸…という感じの4日間でしたね。ガソリンはあまり炊かなかったけど、バッテリーは毎日フル充電しないと保たないという(笑)」

小林選手はなぜエレキで霞ヶ浦を一周したのか。
一見、非効率的にも感じるが、そこには彼だけが知る深い理由があった。

「霞ヶ浦って、風向き次第で行ける場所が限られる。試合当日にどんな条件でも対応できるように、様々な準備をしておくことが大切なんですよ」

強風を伴えば霞ヶ浦は牙を剥く。ピッチの短い三角波が怒涛のように押し寄せ、その様は荒海の如し。いかに走破性の高い愛艇スキーターとはいえ、行く手を阻まれかねないものだ。

「結果、5カ所に絞れました。でも、結局試合では一番良かった場所に入ることはできなくて…」

たとえ自然が味方とならなくても備えあれば憂いなし。存分なバックアップが、華々しい結果へと導くことを可能にするのだ。

ここで気になるのは、その良かった場所とはどう絞ったのか。何を条件に判断したのかが気になる。

「“広く速く”探れるルアーで、エレキで流しながら探って反応が良かった場所ってことですよ。ここぞという場所がある程度判断できたら、“遅く狭く”探る。ルアーですか? もちろんトップウォーターだけです。全然難しくない。俺の釣りはシンプルでしょ?」

未知のフィールドは無論、勝手知ったるフィールドでも過去の実績は捨てゼロからのスタート。そして現場の今を掴んで本戦へと。

「トップウォーターだからこそできることがある。それが俺の闘い方です」

パワーゲーム賢人、かく語りき。

小林選手はトップ50コンペティターの傍ら、鳥取・境港をベースとする『遊漁船CRAZY』の釣らせる船長としても活躍中。取材当時はマイカ(ケンサキ)が旬。詳細はInstagramで検索。
これらは小林選手がトップウォーター戦略の主軸とする手駒たち。ペンシルベイト、ポッパー、そしてフロッグなど。最前線の現場で彼はなぜトップを使い続けるのか。そこが知りたい。

小林知寛はなぜトップウォーターを選ぶのか

― 「ヤル気のある魚ほど、でかい。バスは下より上方向の視野が広い」

小林的トップウォーター哲学は見出しの通り。続けて「ルアーは縦方向に沈めたらそこでしか食わない。水面に近いほど、横方向ほど、実はルアーを見付けやすい。ただし…」 そう安易ではないという。「ルアーアクションが(バスの好みと)違うと即座にダメなこともわかる。そこを突き詰めて答えを探すのが俺の釣り」 でかい魚を5本獲るために。水面上にはトリや人間など、魚にとっての危険度は非常に高いステージ。それでもトップに出る魚とは、総じて「活性の高い、でかいバス」なのだという。

― 最高峰デビュー2戦目、クランク主軸に準優勝

2022第4戦霞ヶ浦《優勝》]

今から21年前、トップ50の前身・ワールドプロシリーズに「体験選手」として初昇格するや2戦目にして準優勝。2日目まで首位を走り、最終日はビッグフィッシュ賞を獲得するも頂点にはわずかに及ばず。その主軸はコンバットクランクMR。パワーゲーマーぶりはこの頃から存分に発揮していた。

2002第2戦小野湖《準優勝》

― 「トップ50戦・小林知寛的トップウォーター主軸戦リスト

― 2014トップ50 A.O.Y.(=年間優勝)

― 「通算3度の優勝はすべて表層ゲームが主軸!

初昇格の2002年から今年2023年の第2戦まで100戦を超す試合数の中で、小林選手のパワーゲーマー振りを強く印象付けた試合のほんの一部を掲載。2014第2戦までは「まだ甘かった」と言うも、以降は安定感を身に付けA.O.Y.(=年間優勝)の獲得に成功している。

― 2014第3戦野尻湖《優勝》

― 最高峰戦での自身初優勝は“蛾”パターン

常勝街道へと突き抜け自身を覚醒させた試合がこの一戦。数年に一度、異常発生する蛾(=ガ)パターン期を制したのがシケイダー改。クリアウォーターながらターゲットとの距離を縮め、高い精度でコントロール。小林選手の戦略勝ちに。

― 2017第3戦七色ダム《優勝》

― ポスト回遊スクールを吊るしで一網打尽

ボウワーム12in高浮力によるウナギリグで仕留めた10lbオーバー(右ページ画像)の印象はあまりにも強いが、メインパターンのひとつに組み込んだのはノールックバグ。オーバーハング外を回遊するスクールの進行方向を狙い定めての吊るしで高確率に。


※本記事は”ルアーマガジン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。

© 株式会社 内外出版社