「上田さーん」。慶応高応援団であふれた甲子園の一塁側アルプススタンド。前監督の上田誠さん(66)が現れると、詰めかけた卒業生、現役生から歓迎のあいさつが飛び交った。
1991年から2015年まで同校野球部を率い、「エンジョイ・ベースボール」の礎を築いた名指揮官だ。「アルプススタンドから野球を見るのは初めて。こういう形で甲子園に来られて、こんなにうれしいことはない」と、まぶしそうにグラウンドを見つめた。
今の森林貴彦監督(50)が2年生だった年に監督に就任。「森林君は、とにかく高校野球が大好きな選手でね」と上田さん。赤松衡樹部長(47)ら多くの現スタッフも指導してきた。「みんなが慶応に戻ってきて、こうしてチームを強くしてくれて、教師冥利(みょうり)に尽きる」。上田さんが種をまいた自由を尊ぶ野球は、教え子たちによって大きく花開いた。