【関東大震災100年】小田原で被災した詩人・北原白秋 直筆原稿など公開 「恐ろしい世の終わりが来た」

詩人北原白秋が関東大震災の被災時の状況を書き記した直筆の原稿=小田原市中央図書館

 関東大震災(1923年)の際、小田原市内の自宅で被災した詩人北原白秋が当時の状況を書き残した直筆の原稿と手紙の一般公開が22日、小田原文学館別館・白秋童謡館(同市南町)で始まった。震源に近く約5千人が死傷した小田原で「恐ろしい世の終わりが来た」と当時の恐怖をつづっている。専門家は「白秋は震災の手記を多く書いたが、直筆で残っている原稿は非常に珍しい」と説明している。

 童謡作家としても知られる白秋は1918年、妻の病気療養のため、東京から小田原市内に転居した。海に近い仮住まいから翌年、丘陵に立つ伝肇寺(同市城山)の境内にかやぶきの「みみずくの家」を建てた。その後、洋風の山荘も増築し、小田原の地で創作に励んだ。

 直筆の原稿が残るのは雑誌「香蘭」(1924年)に寄稿した「胡麻(ごま)の実」。原稿用紙3枚の短い手記で、南足柄市の収集家の男性が所有しているものを震災100年の節目から特別に公開することになった。

 手記で白秋は半壊した自宅から近くの竹やぶに逃げ込み、眼下の住宅街で家屋がことごとく崩れ、皇族の閑院宮家別邸からも煙が上がるのを見たという。「物の爆(は)ぜる音、人の叫び、それ等(ら)が倒れた樹木、崩れた草堂、残暑の日光、風籟(ふうらい)(風の音)、海音、一時失った静謐(せいひつ)、凡(すべ)てをとほして畑のこちらへ迫って来た」と市内全域で約8千軒が全半壊、2千軒が焼失した小田原の惨状を表現した。

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