デビュー50周年のエアロスミス!意外にも初の全米1位は映画「アルマゲドン」主題歌  過去のすべてのカタログと共に移籍して世界同時発売!ベストアルバム「グレイテスト・ヒッツ」

ビルボード総合シングルチャート、“七不思議アーティスト” の筆頭株エアロスミス

ビルボード総合シングルチャート「Hot 100」の歴史は長い。60数年の歴史の中では、様々な “事件” が勃発し、多くの印象的な記録が誕生している。1990年代中盤までチャートマニアの間では、 “それなりにヒットソングの多いビッグネームで、意外にもナンバーワンを獲得していないアーティスト” を、「チャートの七不思議」と呼んでいた。

初チャートインがいちばん古いジェームス・ブラウンや、ブルース・スプリングスティーン、エレクトリック・ライト・オーケストラ、ジャーニー、キッス等が挙げられるが、一般的に最も意外に思われていたのが、エアロスミスだった。1990年代中盤に差し掛かるころ、エアロスミスは “七不思議アーティスト” の筆頭株だったのだ。

1973年の初チャートイン以来、紆余曲折を経て20数年間をかけて全米ヒットチャートに26曲を送り込み、アメリカを代表するヘヴィ・ロック・アーティストとなったエアロスミス。特に全盛期たる1970年代、低迷期から復活後の第2の全盛期ともいえる1990年代前半のヒットソングたちは、日本のロックファンにも深く刷り込まれた代表曲といえるような作品が多い。しかし初チャートインから20数年間、エアロスミスはどうしても全米ナンバーワンを獲得できなかった。トップ10クラスのヒットはいくつか輩出するものの、なぜかトップ到達には至らず… このまま七不思議アーティストの代表格に君臨していくのか、と思われた1998年エアロスミスはイレギュラーな方法で初の全米1位を獲得することになる。

エアロスミス初の全米1位は「アルマゲドン」の主題歌「ミス・ア・シング」

ご存知、90年代を代表するヒット映画となった『アルマゲドン』の主題歌「ミス・ア・シング(I Don’t Want To Miss A Thing)だ。ブルース・ウィリス主演、スティーヴンの娘、リヴ・タイラーが出演したことでも話題となった『アルマゲドン』の主題歌「ミス・ア・シング」は、結果として「Hot 100」で初登場1位を達成、4週連続ナンバーワンというメガ・ヒットを記録した。なんと!1970年代から切望していた「Hot 100」トップの座を、1998年9月にとうとう実現してしまったのだ。初チャートイン(1973年10月20日)からおよそ25年、苦節四半世紀を経ての初トップ到達は、最長記録としてビルボードの歴史に刻まれた。

粗削りな勢いで英ヘヴィロックへのアメリカ側からのカウンターパンチを繰り出した1970年代、薬物禍に伴うスティーヴンとジョー・ペリー決別期という名の低迷期を経て(1980年代前半グループはコンスタントに作品はリリースしていたが)、結果論としてヒップホップとウィンウィンとなったランDMC「ウォーク・ディス・ウェイ」(1986年)を契機として大復活、第2の全盛期ともいえる1990年代を謳歌、ここぞというタイミングでエアロスミスは初の全米ナンバーワンという栄誉を手にした。

「ミス・ア・シング」の「Hot 100」1位は、おそらく狙って取りにいったものだったのだろう。外部ライターの起用(ダイアン・ウォーレンという盤石のヒットメイカー)、最大公約数的アプローチに振り切ったスティーヴンの歌唱法、過去の大ヒット・バラッドをなぞった全体的な “置きにいった感” 等を鑑みれば、待望のナンバーワン狙いは盤石な態勢で臨んでいたようだ。思わぬところでビッグネーム、エアロスミスは(名誉なのか不名誉なのかどちらともいえない)大記録で、その名を大衆音楽の歴史に刻むこととなった。

「ミス・ア・シング」以降のエアロスミスは、ショウビズ界のご意見番的立場に “アガッた感” が半端ないのだが。なによりも七不思議アーティストから離脱できたことを最も喜んでいたのは、何を隠そうスティーヴン・タイラーその人だったりして。

デビュー50周年、エアロスミス究極のベスト「グレイテスト・ヒッツ」

エアロスミスの歴史を振り返るとアメリカンヘヴィロックのメインストリームへの台頭・成熟の縮図を見るようだ。

今年2023年デビュー50周年を迎えたエアロスミスは、過去のすべてのカタログ(主にCBSコロムビアとゲフィン)と共に移籍したユニバーサルミュージックから、究極のベスト『グレイテスト・ヒッツ』がリリースされた(2023年8月18日)。

これを機会にエアロスミスの全キャリアを網羅したCDを堪能するのも、一興ではないだろうか。

カタリベ: KARL南澤

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