【スポーツクラブ】ルネサンス、コナミ・セントラルの上位2社を逆転して業界トップへ

ルネサンスの傘下に入る東急スポーツオアシス(都内の店舗)

スポーツクラブの業界地図が塗り替わる。業界3位のルネサンスが準大手の東急スポーツオアシスを2024年3月に買収することになったからだ。これにより、コナミスポーツは2位、セントラルスポーツは3位にそれぞれ順位を落とす見通しだ。会員数がコロナ前の水準に戻っていないうえ、光熱費などのコスト上昇で厳しい事業環境が続く中で、業界再編の起爆剤になる可能性がある。

ルネサンス、指定席の3位を返上

「予想通りの展開だ」。ライバル関係にある大手スポーツクラブの店長はこう漏らす。ルネサンスが東急スポーツオアシスに40%を出資し、持ち分法適用関連会社としたのは今年3月のこと。次のステップとして子会社化が既定路線とみられていただけに、業界内にさほど驚きはない。

ルネサンスは8月10日、東急スポーツオアシスの株式60%を東急不動産から追加取得し、2024年3月31日付で完全子会社化すると発表した。連携や協業の効果をさらに引き出すのが狙いとしている。買収金額は非公表。ブランドの統合などは今後詰める。

ルネサンス、東急スポーツオアシスはいずれもマシンジム、プール、スタジオ、浴室などを備えた総合型スポーツクラブを運営している。直営店舗はルネサンスが全国104店舗、東急スポーツオアシスが31店舗(首都圏22、近畿圏9)を展開し、合計135店舗となる。セントラルスポーツの約180店舗に及ばないものの、コナミスポーツの約150店舗に迫る。

今回の「ルネサンス・オアシス連合」誕生が業界に与えるインパクトは少なくない。いわゆる“御三家”の順位が入れ替わるのだ。売上高3位が指定席だったルネサンスが一気にトップに躍り出ることが確実視される。

2024年3月期(通期)の売上高予想はコナミスポーツ8.8%増の495億円、セントラルスポーツ6%増の462億円、ルネサンス7.9%増の440億円。

ルネサンスが傘下に収めるオアシスの2022年3月期売上高は135億円(23年3月期は非公表)で、24年3月期は140億〜150億円程度とみられる。これが加われば、ルネサンスの連結売上高は600億円規模に拡大する計算だ。

ルネサンスの店舗(東京都世田谷区)

コナミ、セントラルの出方は?

となると、注目されるのが順位を下げるコナミスポーツ、セントラルの出方。だが、現状はこれといった打ち手を見通しづらいのが実情だ。コナミはコロナ以前、直営店舗数でも第1位を誇ったが、固定費負担を抑えられる運営受託に経営の軸足を移し、直営店舗を約30店舗を減らすなど守勢に回っている。

一方、コナミと対照的に直営店舗にこだわり、その数を維持しているのがセントラルで、いわば王道を歩む。同業他社の買収にも距離を置き、2013年に明治ホールディングス傘下の明治スポーツプラザ(川崎市)を子会社化したのを最後に途絶えている。

これに対し、M&Aに積極的なのがルネサンスだ。2021年にアウトドアスポーツ事業を手がけるBEACH JAPAN(横浜市)を子会社化。今年1月末には国内投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(東京都港区)から約50億円を調達し、コロナ禍でダメージを受けたスポーツクラブ業界の再編成などを見据えた体制整備に充当する方針を明らかにしている。

大阪ガス、スポーツクラブを売却

スポーツクラブをめぐってはコロナ禍で落ち込んだ会員数が回復途上にあるうえ、足元では光熱費などの上昇で運営コストが跳ね上がっている。近年はマシントレーニングに特化し、小規模・無人で会費の安い「24時間ジム」「コンビニジム」の台頭など業界を取り巻く環境の変化も著しい。

こうした中、昨年7月、大阪ガス傘下で関西を中心に総合型スポーツクラブ「コ・ス・パ」、24時間ジム「FITBASE」など約60施設を展開するオージースポーツ(現COSPAウエルネス、大阪市)が物流大手のセンコーグループホールディングスに買収された。

現在業界4位のティップネスも実は親会社の変更を経験している。元々、サントリーホールディングスの傘下だったが、2014年に日本テレビホールディングスに買収され、今日にいたる。

他方で、コロナ禍の収束に伴い健康増進やスポーツへの需要が改めて高まっている。「ルネサンス・オアシス連合」を軸に今後、合従連衡の動きが波及するのか、要ウオッチとなりそうだ。

文:M&A Online

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