兵役に結婚に ソン・ヨンハンは7年のブランク経て復活V

ソン・ヨンハンは最後は辛くも1打差V。7年半ぶりにタイトルを手にした(撮影/奥田泰也)

◇国内男子◇Sansan KBCオーガスタ 最終日(27日)◇芥屋GC(福岡)◇7216yd(パー72)◇晴れ(観衆9449人)

最終組で相対したライバルを寄せ付けなかった。宮里優作が10mのバーディパットを沈めて反撃ののろしを上げた前半5番。ラフから木越えの2打目で懸命にグリーンにのせたソン・ヨンハン(韓国)は、鮮やかに5mを入れ返して、リードを保った。

3人が並ぶ首位スタートから8番終了時には後続に4打差をつけた。「自分に負けないこと、自分に勝つこと」を最後まで言い聞かせた一人旅。最終18番(パー5)で右ラフからの2打目を「アマチュアみたい…」な“チョロ”からダブルボギーを叩いても、永野竜太郎を1打リードして逃げ切った。

2016年1月の「SMBCシンガポールオープン」から2勝目を挙げるまでに7年半かかった。上位争いを続けたがタイトルがないまま、19年から2年間、母国の兵役についた。

入隊した陸軍は、視界に北朝鮮の土地が広がる北緯38度線の近く。「僕は29歳で入ったけれど、韓国人は多くが20歳、21歳くらいで行くんです。僕のほうが年上なのに“ヨンハン!”と呼ばれたり…。あれが最初の1年間は一番大変だった。タメ口は好きじゃないです(笑)」と上下関係に首を傾げることもあった。

ブランクのあいだに兵役も、結婚も(撮影/奥田泰也)

新型コロナ禍のあいだ、日本ツアーから去った外国人選手も多くいたが、ソンはあくまで「日本で勝ちたかった」という。韓国ツアーのシードは手放した。入隊中、21年に復帰するまで参考書で日本語を勉強し、ひらがな、カタカナが読めるようになった。「メニューに写真がなければ注文できなかった」飲食店でのオーダーもほとんど問題ない。

その年の12月、韓国の一般女性と結婚、ソウルの明洞(ミョンドン)大聖堂で挙式した。「結婚して、去年はダメだったから、ワイフもこれで安心する。とりあえず会いたい」。今季に入る前のオフには、コンパクトだったバックスイングを大きくする改造にトライ。ドローボールも覚え、「風が強い時にもよくなった」実感がある。2週後に韓国で開催される「シンハンドンヘ オープン」(クラブ72CC)にもホストプロとして胸を張って参戦する。

「どんな人からも優しく、良い選手と思われるようになりたい」と、人間的にもお手本になるようなプロゴルファーになるのがキャリアの目標。勝利を手にした直後、ウォーターシャワーを浴びせた面々には、永野や阿久津未来也ら日本人選手も多くいた。日本ツアーの微笑みの貴公子が、一回り大きくなって帰ってきた。(福岡県糸島市/桂川洋一)

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