投資リスクに触れず、所得倍増ばかり主張の総理

 経団連や証券業界などからタンス預金や銀行預金が株式など投資市場へ流れるよう期待する業界団体の要望に答え、自民総裁選挙時に提唱していた「所得倍増」を引っ込め、総裁・総理就任後は「資産所得倍増」にすり替えて政策推進している『貯蓄から投資へ』の財界後押し政策。日本証券業協会と全国銀行協会がこのほど主催した「職場における資産形成セミナー」にもビデオメッセージを寄せて、投資への流れを推進とアピールした。

 岸田総理はビデオの中で「今年を資産所得倍増元年とする」とぶち上げ「NISA(少額投資非課税)制度の抜本的拡充・恒久化などの取組みを通じ、家計金融資産の半分以上を占める現金・預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元され、家計の資産形成と更なる投資や消費につながるという好循環を実現していく」と訴えた。家計の金融資産が投資に流れて喜ぶのは企業経営者と大株主に他ならない。

 投資である以上、元本割れリスクがあるが、これには一切触れず。「投資で倍増」ばかり標榜するのはいかがなものか、と冷ややかな声もある。

 会合出席者が企業経営者や人事・労務担当者であるとはいえ、岸田総理は「官民一体となって『貯蓄から投資へ』のシフトを大胆かつ抜本的に進めることで『成長と分配の好循環』が実現することを祈念する」と投資が成長と分配の好循環につながるとばかりに主張を展開している。(編集担当:森高龍二)

「投資で倍増」ばかり標榜するのはいかがなものか、と冷ややかな声もある

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