【MLB】 大谷翔平はなぜMRI診断を受けなかったのか FA市場への影響を懸念か

写真:大谷翔平©Getty Images

大谷翔平が右肘の内側側副靭帯(通称UCL)を損傷し、投手として今季絶望となったことは球界を揺るがす大ニュースとなった。

大谷をストップできずにフル稼働させてしまったエンゼルス首脳陣への批判が高まる中、エンゼルスのペリー・ミナシアンGMは、大谷と大谷の代理人がMRI診断を拒否したことを明かした。現地3日のマリナーズ戦において中指の痙攣で途中交代した大谷に対し、球団はMRI診断を要請したが、大谷側は不必要と考えたという。

しかし、経緯はともかくとして、靭帯損傷という投手としては最悪の結末に至ってしまった以上、事前にMRI診断を受けていれば…と思ってしまうのも無理からぬことだ。

大谷がMRI診断を拒否したのはなぜなのか。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』のリンゼイ・アドラー記者が、その理由を迫る大谷のFA戦線に言及して分析している。

まず前提として、選手がシーズン中にメディカルチェックを拒否するのは特別なことではない。

ミナシアンGMも同じ会見で「理由は理解できる。(そのときはただの)中指の痙攣であり、画像診断が必要とは思わなかったのだろう」と理解を示していた。ときにはMRIの装置に入るのが不快であるから、ということですら十分な理由になるという。

アドラー氏はさらに大谷翔平のFAが今冬に迫っていることにも言及。大谷翔平がどんな契約を結ぶのか、史上最高額の契約を結ぶのかがオフの最大の関心事であったことは言うまでもない。

仮に大谷が事前に球団主導のメディカルチェックを受けていれば、その診断結果はMLBの中央メディカル情報データベースに登録されるはずだった。このデータベースはチームが獲得しようとする選手の過去の診断結果を全球団共通で把握できるように使用されるもの。これにはトレードの際にチームがメディカルの情報を偽ったり、秘匿したりすることを防ぐ役割がある。

しかし、FA契約の交渉においては、選手たちは自分のメディカル情報がたくさん残っているせいで、怪我のリスクありと見られて自らの市場価値が下がってしまうリスクがある。昨年のFA市場でカルロス・コレアが、現在は問題ないにも関わらず、過去の足首の怪我がネックとなり、2回契約破棄となったことは記憶に新しい。

つまり、大谷も仮にシーズンを健康に終えていた場合、靭帯損傷のリスクありと取れる診断結果が残っていれば、FA交渉において大いに不利となっていた可能性があるということだ。

どんなFA選手でも契約が正式に決まる前にメディカルチェックを受けることになる。ただ、メディカルチェックを受ける前には既に契約の内容は報じられているのが通例。その時点では既に契約締結へのプレッシャーが大きくなっている可能性が高い。

結局、靭帯を損傷してしまい、本来の市場価値を大きく損なう結果となってしまった大谷翔平。批判の的ともなったMRI診断拒否の真相には、FA戦線を見越した深謀遠慮があったのかもしれない。

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