北海道で活用進む“未利用魚” おいしいのに捨てられていた!?

今回のテーマは、“未利用魚”。見た目が悪かったり、調理に手間がかかったり、型が小さかったり…という理由で、市場に出回らない魚のことだ。捨てられるか、値段が付かずに自分で消費することが多かったが、フードロスの削減や不漁などを背景に、近年活用しようという動きが出ている。

【函館で始まったプロジェクト カギは加工!?】

函館の海の横を走る国道沿いにある海産物卸問屋、福田海産。市内の漁師から魚が運ばれ、早速、調理場で下準備が始まった。

処理しているのはサバだが、よく見るとかなり小さい。さばいた後の大きさは10センチほどしかない。

ここ福田海産では型が小さい、見た目が悪いといった理由で市場で取引されない魚、いわゆる未利用魚を漁師から買い取り、加工して商品化。調理場に併設している店頭で販売している。

この日店頭に並んでいた未利用魚を使った加工品は8種類。1袋に数匹入っていて、価格は400円ほどだ。函館では近年、主力のスルメイカの記録的な不漁が続く。一方でこうした未利用魚は多く取れるようになってきているのだが、売り先がなく、ほとんどが廃棄されていた。これを何とかしようと、福田さんたちはことし6月、未利用魚の商品価値を高め、漁師に安定収益をもたらすためのプロジェクトを立ち上げたのだ。

カギを握るのが、“だし”。地域資源を生かした商品企画など手掛ける合同会社「エガオ」がプロデュースした。

函館産の真コンブ、根コンブ、がごめコンブなどを使用。魚を加工する際は表面に塩をまぶし臭みを取るのが一般的だが、それだと含まれている水分も一緒に失われてしまう。このダシに漬け込むと臭みだけがとれ、水分はそのまま残されるのだという。

「エガオ」のプロデューサー川崎さんは「地場のいかめし製造のレトルト技術によって、賞味期限を180日にできた。この加工によって流通に可能性が生まれる」と話す。流通コストを抑えるために、まずは地元のみで販売するという。

また、湯の川温泉にあるホテル万惣はことし7月から、宿泊客に提供するビュッフェで未利用魚の刺身を提供し始めた。この日並んだのは、小さく規格外のため市場に出せなかったヒラメ。

マグロやタコ、ホタテと共にビュッフェの刺身コーナーに並べられた未利用魚のヒラメにはしっかりと函館産の文字が。

札幌からの客は「知らずに食べていたが、おいしい。捨てたらもったいないので、活用されていると知り感動した」と話す。近藤総支配人は「客は地魚を求めている。規格外でも味は本当においしいので客に味わってほしいというところから始まっている」と話す。

【知床の深海魚“ゲンゲ”が町を盛り上げる!?】

先月中旬、知床半島 斜里町ウトロの港には、漁を終えた船の姿が。とれたのは高級魚として知られるキンキだ。知床産のキンキは身だけではなく皮にも脂がのっていて特に高値で取引される。この船はキンキの刺し網漁を主力としている。

そんな中に全く種類の異なる見慣れない魚が。ドロッとしていて、なんとなく愛嬌のある顔。この魚は、ゲンゲ。深海魚だ。

購入したのは、斜里町で水産加工会社ヤマヤ北翔丸水産を営む泉さん。漁師でもある。

このゲンゲ、知床では流通しているというが、ほとんど値は付かない。価格は1キロ150円ほど、多い時には1回に20キロほど上がるという。泉さんは先月から、知床以外の地域では食べられることの少ないゲンゲの普及を目指し、動き出した。

札幌に泉さんのゲンゲ普及プロジェクトに全面協力する鮮魚店がある。鮮魚店鯔背(いなせ)の社長小野さん。こだわりの魚を入荷し、客の目の前でさばく販売スタイルが人気を呼んでいる。店頭には、規格外の小さい魚も並ぶ。

この日、小野さんの元に知床の泉さんからゲンゲが届いた。処理されたゲンゲは水分が多いためキッチンペーパーの上で2日間寝かせ、水抜き。小野さんが指示を出しながら揚げ物にするための下処理が行われた。

そしてこのゲンゲは札幌から再び知床へ。泉さんは「おいしかったらゲンゲも高級魚に変わるかもしれない。コラーゲンの塊なので美容にもいいし、女性に人気になってくれたらいい。まずは地元の飲食店に出してもらって、知床から発信していきたい」と話す。

【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは、スタジオで未利用魚を試食。「おいしいし、お弁当に入れてもいい」と味の感想を述べた上で「消費者マインドを変える必要がある。いっそのこと高級品として高い値段をつける戦略もある」と話した。工夫次第でおいしく食べられる未利用魚。ぜひ、一度食べてみてはどうだろうか。
(2023年9月2日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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