【MLB】 2度のトミー・ジョン手術から復活 ロイヤルズに突如現れた剛腕レーガンス

写真:8月の成績は軒並みメジャートップだったロイヤルズ・レーガンス

コール・レーガンスの勢いが止まらない。

8月にローテ入りを果たして以来、防御率1.72、総合指標fWAR1.8はメジャートップ、奪三振率13.01はメジャー2位。レーガンスの残した数字は並み居るメジャーの好投手を差し置いて群を抜いている。

そもそもコール・レーガンスとは何者なのか。

レーガンスは現在25歳の若手だが、いわゆる全国区のプロスペクトとして持て囃されたことはない。無名の存在だったとも言っていい。

レーガンスの出世を阻んできたのは度重なる故障だった。

2017年にローA(A-)で迎えた初のフルシーズンにおいて、19歳ながら13先発で防御率3.61と非凡な成績を残したレーガンスは、翌春にトミー・ジョン手術を受けることになる。14ヶ月にも及ぶリハビリ生活の末、復帰を目前としていたレーガンスを待っていたのは、さらなる怪我だった。彼は再びトミー・ジョン手術が必要だという残酷な宣告を受けた。

2020年のパンデミックもあって公式戦の登板から遠ざかること丸3年、2021年と翌22年にマイナーで好成績を残し、レーガンスはついに2022年に念願のメジャーデビューを果たす。

2度のトミー・ジョン手術からカムバックし、マイナーの階段を駆け上がってデビューを飾ることは並大抵のことではない。しかし、レーガンスはそこで立ち止まらなかった。

2022年シーズンを終えた後、レーガンスはオフのトレーニングを一新。メジャー屈指のクローザーであるジョシュ・ヘイダー、そして平凡な投手からオールスター級に覚醒したミッチ・ケラーとクレイ・ホームズも利用する“トレッド・アスレチック”という施設で、トレーニングの指針を仰ぐことになったのだ。

「私は自分自身に投資し、全力を尽くした」と本人が語る通り、レーガンスは懸命に多様なトレーニングに取り組み、その結果は目覚ましいものとなった。2022年には約148キロ程度だった速球の平均球速は、約155キロ・そして最速は約163キロに達するほどに。これほどの球速上昇を見せた投手はこのレーガンス以外にはいない(300球以上投げた投手の中で)。

そして迎えた今年、レンジャースではなかなか先発としての機会を得られなかったものの、アロルディス・チャップマンとのトレードでロイヤルズに移籍するという転機が訪れる。ロイヤルズのマイナーで先発として調整する中で、徐々に制球が改善。さらに「左打者に対して強くなりたい」と移籍後に新たにスライダーを投げ始め、彼のピッチングにはますます磨きがかかった。そこからメジャーに昇格してからの活躍は、上記の通りである。

近年は投手育成に大きく苦しんできたロイヤルズだが、ついにエースを見つけたかもしれない。

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