現地での慰霊 一区切り 名立南部仏教協会 現場近くから祈り 事件語り継いで 坂本弁護士一家殺害事件

遺体発見現場の方向に向け手を合わせる僧侶ら

1989年11月、オウム真理教幹部により横浜市の自宅で殺害され、6年後の95年9月6日に名立区の山中で遺体が発見された坂本堤弁護士(当時33)の慰霊行事が6日、遺体発見現場から最も近い集落にある不動地域生涯学習センター(同区瀬戸)で営まれた。

名立南部仏教協会が毎年、遺体が発見された9月6日に営んでいる。現地での慰霊を予定していたが、午前に降った雨で通行が不能となり、会場を移して行うことにした。会場には坂本さんと同じく殺害された妻の都子さん(当時29)、長男の龍彦ちゃん(当時1)が1枚に収まった写真が掲げられ、同協会の永春泰禅会長(78)ら7人の僧侶が読経、焼香して冥福を祈った。地元関係者も参列し、手を合わせていた。

同協会は会員僧侶の減少と高齢化、各寺院での慰霊に努めていることから、毎年営んできた現地での慰霊に今年で区切りをつけることにしている。永春会長は「今後は(新たな)慰霊の形を考えたい。若い人は事件のことを知らない。語り継ぎ、忘れないことが大切だ」と話した。

初めて慰霊の現場を訪れた、上越教育大大学院の塚田穂高准教授(宗教社会学)は「坂本弁護士一家殺害事件は、オウム真理教が教団の外部に刃(やいば)を向けた点で、一連の事件のターニングポイントとなった。行政も学者もメディアも、その後事件を食い止めることができなかった。われわれは今後もそのことを考えていかなければならない」と話していた。

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