北海道の“幻のカニ” 花咲ガニ 資源保護の取り組みも

今回のテーマは、根室を代表する味覚、花咲ガニ。根室を中心とした北海道東部の一部でしか水揚げされないカニだ。ことしもシーズンを迎えたが、取れる量が年々減っていて、今ではピークの3分の1程度しかない。地元では、花咲ガニを盛り上げようという動きや、水揚げを増やす取り組みも行われている。

【花咲ガニ 名前の由来は】

まず訪れたのは、カニの加工と販売を行う杉山水産。

花咲ガニは別名、コンブガニとも呼ばれ、昆布を主なエサとしている。花咲の名は、
根室の花咲の地名に由来していると言われているのだが、もうひとつの由来がある。

ボイルすると茶色だった殻が真っ赤に。花がさくようなその様子が名前の由来だという説もある。地元では祝い事の席に登場するとてもありがたい食材でもある。

こちらの会社では漁期の7月~9月までの間で約60トンを加工する。販売先は主に北海道。数年前から海外輸出も手掛けている。島社長は「アジア方面、ベトナムや台湾などから、注文があれば出荷している」と話す。

【人気はあっても量が取れず…】

花咲ガニの食べ方はボイルだけではない。納沙布岬へ向かう道沿いにあるイタリアンレストラン「ボスケット」。根室出身のシェフが地元の食材を使って腕を振るっている。

店の一番人気は、花咲ガニを使ったトマトクリームスパゲッティだ。地元の観光協会は、こうした花咲ガニを使った料理を提供する店をホームページで紹介。根室の夏の観光資源として大々的にPRしている。

先月末には根室の一大イベント、根室かにまつりが4年ぶりに開催。全国各地から観光客が訪れ、大いに盛り上がった。

根室で最も大きな港、花咲港。この日、ここで花咲ガニのかご漁が行われていた。天候に恵まれず、5日ぶりにようやく漁に出ることができたという。約800キロの水揚げがあった。

漁期が2カ月余りしかない花咲ガニ漁は時間との勝負。しかし、ここ数年は思うように取れない状況が続いているという。1990年代初めのピークの頃には根室市だけで年間300トンほどの水揚げがあった花咲ガニ。近年は年間100トン前後と3分の1にまで減少してしまった。

そのため地元が取り組んでいるのが漁獲調整だ。オスは7割、メスは5割を上限とし、翌年の資源維持へとつなげている。

さらに、国内ではほとんど例のない稚ガニの放流も行っている。根室水産研究所では、水産資源の確保を目的に10年前に放流事業を開始。ことしは4月に大きさ2ミリほどの稚ガニを約83万匹放流した。

花咲ガニは成長するために脱皮をするため、印をつけて追跡することができない。生き残った個体がどれぐらいあるのか把握できないという課題はあるのだが、漁業関係者からは「稚ガニが増えた」という声も聞かれるという。

観光資源としてのブランド力を保ちつついかに資源量の回復を図っていくか。地元の奮闘はまだまだ続きそうだ。
(2023年9月9日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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