新規上場する独立系投資ファンド・インテグラルとは?

インテグラルが入居するグラントウキョウサウスタワー

独立系投資ファンド・インテグラル<5842>が8月17日に上場承認され、9月20日にグロース市場に新規上場します。国内のPEファンドが日本の株式市場に上場するのは珍しいケースだと言えるでしょう。

インテグラルはスカイマーク<9204>の再生や、1000円カット「QBハウス」のキュービーネット<6571>、アデランス(東京都品川区)などへの出資を行ってきました。

創業者で代表取締役パートナーの山本礼二郎氏と取締役パートナーの佐山展生氏は、M&AアドバイザリーのGCA(東京都千代田区)を設立したことでも知られています。インテグラルは2人が創業して上場へと導いた2つ目の会社となります。

この記事では以下の情報が得られます。

・インテグラルの概要
・業績推移
・収益モデル

ファンドの管理手数料が収益全体の7割を占める

インテグラルは2006年1月設立の会社。2008年9月に出資金112億円でインテグラル1号投資事業有限責任組合を組成しました。

出資先は日本の中堅企業が中心。年商10億円以上、1000億円未満を主な投資対象としており、このセグメントの会社はおよそ11万7000社あります。インテグラルは資金や経営ノウハウの不足に悩む会社を見つけて出資し、基本的には3~5年でエグジットを行います。

ただし、インテグラルは短期的なリターンを追求するだけではありません。同社はプリンシパル投資とファンド投資を並行して行うハイブリッド投資を開発しました。プリンシパル投資とは、自己資金によって投資を行うことです。

ファンドは償還期限を設けているものが多く、一定期間でリターンを出さなければなりません。そこにプリンシパル投資を組み合わせることで、ファンドの投資期間よりも長期に設定することができます。

プリンシパル投資は投資額の基準が設けられており、その範囲内で出資を行います。

インテグラルの社名の由来は演算子の「∫」。これは積み重ねを意味しています。信頼関係で結ばれた企業同士が、企業価値を積み重ねるという思いが込められています。ハイブリッド投資を行っている投資ファンドはほとんどありません。長期的な視点で出資先の企業価値を高めている点は、他の投資ファンドにはないインテグラルの特徴だと言えます。

収益は大きく8つの要素で構成されています。

1.投資売却による実現利益
2.ポートフォリオへの投資の公正価値変動
3.公正価値で評価している子会社の公正価値変動
4.配当
5.投資ポートフォリオからの受取利息
6.受取管理報酬(ファンドの管理手数料)
7.キャリードインタレスト
8.経営支援料

収益面においては、ファンドの管理手数料の貢献が大きくなっています。2022年12月期においては、収益全体の約7割(38億1700万円)が管理手数料によるものでした。

■収益分解

※新規上場申請のための有価証券報告書より
※新規上場申請のための有価証券報告書より(日本の会計基準)

従業員の平均年収はおよそ1800万円

多くのPEファンドに共通することですが、このビジネスにおいては原価がほとんどかかりません。インテグラルの2022年12月期の売上総利益率は94.2%でした。経費の多くは人件費が占めています。インテグラルの2023年7月末時点での従業員数は67。平均給与は1779万円。年間およそ12億円が給与として支払われている計算になります。

ストックオプションも発行しており、今回の上場は従業員へのインセンティブという意味合いも大きいものだと考えられます。

公募株は520万株で、仮条件の条件2400円で計算すると124億8000万円を調達することになります。市場から吸収した資金はGP出資、プリンシパル投資などに充当する計画です。

取締役である佐山展生氏の持株230万の海外市場への売出も行います。売却額は単純計算で55億2000万円です。

インテグラルは2015年に経営破綻したスカイマークの再生支援に乗り出しました。佐山氏はスカイマークの代表取締役会長に就任し、立て直しに尽力します。路線の絞り込みで搭乗率を引き上げるなど、効率化を推し進めました。スカイマークはわずか1年で黒字化を果たします。

2020年に東証一部への再上場を目指していたものの、コロナ禍で見送りを余儀なくされました。しかし、日常を取り戻しつつあった2022年12月に再上場を果たします。初値は公開価格よりも8.7%高い1272円でした。

佐山氏は1999年に日本で初めてとなる大型のバイアウト・ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京都千代田区)を設立するなど、国内にPEファンドを広めた功労者の一人です。

2021年4月にインテグラルの代表取締役を退任していました。

麦とホップ@ビールを飲む理由

麦とホップ

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

© 株式会社ストライク