【MLB】超有望株は大失速のチームを救えるか? レンジャーズのエバン・カーターがMLB昇格

写真:MLBデビューを飾ったレンジャーズのエバン・カーター

8月15日(現地時間)時点で、アメリカンリーグ西地区3位のマリナーズと首位レンジャーズの差は7.5ゲーム差あった。この当時、多くの人はこう思っていたはずだ。「マリナーズは最近調子いいけど、ワイルドカード行けるかな?まあレンジャーズの優勝はまだわからないけど、プレーオフは決まりだろうな」と。

まさか1ヶ月足らずののちにレンジャーズが3位に転落し、マリナーズが一時首位に立つなんてことが起こるなんて、誰が予想できただろうか?

9日(現地)の試合でレンジャーズはアスレチックスに3−2で逆転勝利。なんとか連敗を4で止めた。前日までの20試合、レンジャーズは4勝16敗。歴史上稀に見る失速で首位はおろかプレーオフ進出圏内からすらも滑り落ち、現在はワイルドカード2、3枠目を保持するマリナーズとブルージェイズを1.5ゲーム差で追っている。この間の20試合、チームの得失点差はなんとマイナス61点。74得点に対して失った失点は135点。実に得点の倍近い失点をしていたことになる。

ここまでの大失速を引き起こした最大の原因は投手陣の大不振だ。8月15日以前のレンジャーズはチーム防御率が3.98で30球団中11位。総合的な貢献を測るWAR(Fangraphs算出)は14.9で30球団中4位。まさにMLBでも屈指の投手陣だったと言える。

ところが8月16日以降で見ると状況は一変。9月9日までのチーム防御率は6.33で30球団中28位、WARに至っては−1.7で全体最下位という有様だ。どのような要因があったかはわからないが、少なくとも数字だけ見るとある瞬間を境に、リーグ屈指の投手陣が一気にリーグ最悪の投手陣へと変貌してしまったように思われる。

ただ、この失速が投手のみの影響で引き起こされたかというとそうでもない。レンジャーズの野手も投手とあまり変わらないレベルで大失速しているからだ。レンジャーズのチーム打率は8月15日以前が.273(30球団中2位)だったのに対し、8月16日から9月9日までは.226(30球団中29位)。WARで見ても26.4(30球団中2位)が1.6(30球団中23位)と大幅に悪化している。投打でリーグ屈指を誇っていたチームの投打両方が同時に大きく崩れてしまったというのがこの大失速の要因だったようだ。

このような大失速を受け、レンジャーズは思い切った選択を下す。MLB公式のプロスペクトランキングで全体8位の超有望株エバン・カーターをMLB昇格させたのだ。

もちろん、プレーオフを争うチームがチーム屈指の有望株をMLBに昇格させ、最後のブーストをかけることは珍しい話ではない。とはいえ、AAA級でそれほど抜きん出た結果を出しているわけでもないカーターを、わずか8試合の出場のみで昇格させるのは少し異例だ。レンジャーズのフロントがかなり切羽詰まっていたことがうかがえる。

そんな状況ではあったが、カーターは見事チームの期待に応えた。現地時間8日の試合に9番・右翼で先発出場したカーターは1安打1四球で2度出塁し、1盗塁をマーク。チームは敗れたが、能力の一端を見せた。同時に三振を2つ喫するなど課題も見えたが、昇格の経緯を考えれば十分すぎるはたらきと言えるだろう。少なくとも、苦しむチーム全体を活気づけることはできたのではないだろうか。

現状プレーオフ進出圏外にあるレンジャーズだが、諦めるにはまだ早すぎる。残り20試合程度のうち、プレーオフを争うブルージェイズ戦が4試合、マリナーズ戦に至っては7試合も直接対決が残っているからだ。まさかの大失速こそあったものの、十分に挽回は可能と言えるだろう。もともとチーム力はMLB全体でも最上位クラス。超有望株の昇格をきっかけに、チーム全体が本来の能力を取り戻すことはあるだろうか。

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