タツノコプロ制作のSFアニメ【未来警察ウラシマン】斬新すぎたエンディングテーマ!  歌うはHARRY!ニューウェイヴ風キレキレのシンセポップ「ドリーム・シティ・ネオ・トキオ」

架空都市の名がネオ・トキオ、「未来警察ウラシマン」

九州の小都市で純然たるテレビっ子として育った僕が、生まれて初めて “東京” を意識したのは、沢田研二が歌う「TOKIO」(1980年)を知った時だった。ド派手な電飾とパラシュートをまとったジュリーが、6歳の少年のココロをワシ掴みにしたのである。

その晩TOKIO=東京の意味を教わった僕は、空を飛ぶビッグ・シティを夢想して寝付けない夜を過ごしたのだった。

それから3年ののち、早熟のガンプラ少年兼アニメ馬鹿となっていた僕の前に、予期せず再びTOKIOなる言葉が現れた。1983年のアニメ『未来警察ウラシマン』である。毎週日曜夕方6時に放映された、“タイムスリップ未来SFモノ” タツノコプロ制作のアニメだ。その舞台となった架空都市の名が「ネオ・トキオ」だったのだ。

なるほどネオ・トキオか! とジュリー以来忘れていたくせに必要以上の納得感を得た小3の僕は、架空の東京=ネオ・トキオで巻き起こるSFメカ多数出現の事件や、主人公リュウを中心とする未来警察と悪玉ネクライムの最高権力者である総統フューラーとの闘いに毎週胸を躍らせた。

早すぎたアニソン歌手、HARRYが歌う「ドリーム・シティ・ネオ・トキオ」

そして、僕に強烈なインパクトを与えたのがエンディングテーマ曲「ドリーム・シティ・ネオ・トキオ」だ。作詞・康珍化、作曲・芹澤廣明、歌は知る人ぞ知る早すぎたアニソン歌手、HARRY(木村昇)。日曜の夕方特有のせっかちな哀しみの内包はもちろんのことながら、この曲はそれまでのアニメのエンディング曲に比べてとにかく斬新だった。

まるで劇伴ぽくない曲調が当時最先端ともいえるニューウェイヴ風キレキレのシンセポップで、これまでのアニソンのように、主人公やメカの名を声高に叫ばず、舞台設定された都市が歌詞のテーマだった。

このエンディングテーマ曲が流れる背景も斬新で、アクション性も叙情性もゼロ。その画面の両脇を二人のリュウが互い違いに歩くだけの謎めいた映像にネオンサインのみで象徴的に描かれた夜の大都会ネオ・トキオの漢字の東洋風ネオンが印象的だった。

そんなエンディングのドキドキする違和感に対し、当時の僕が導き出せた結論は「巨大ロボが出なくても面白いアニメはあるんだ!」というあまりにも無邪気な感嘆だけだった。そして、その天真爛漫な熱量のみを原動力に、地元九州では一片のカケラも見つけられない未来がある場所 “ネオ・トキオ=未来の東京” に憧れを募らせたワケである。

最終話に近づくにつれ劇的にハードボイルドなサスペンスストーリーに傾斜

全50話にわたるアニメ『未来警察ウラシマン』は、最終話に近づくにつれ劇的にハードボイルドなサスペンスストーリーに傾斜していく。正直リアルタイムでは、僕には理解が足りなかった。

1983年から2050年のネオ・トキオにタイムスリップした主人公のリュウだが、彼が闘った悪役の総統フューラーこそが、実は未来のリュウの姿だという設定があったことを僕が知ったのはずいぶん後のことだ。

さて僕は高校卒業後の1992年に東京に出てきた。そこにかつて夢見たTOKIOがあったのかどうか、人並みの希望と失望に流されて大人になってしまった僕にはよくわからない。

ただ、今でも確かにネオ・トキオは僕の心の中に生きている。ウラシマ・エフェクトによりタイムスリップし、失われた時を求めていたはずの記憶喪失のリュウは、最後には過去に帰るのを拒み未来のネオ・トキオで生きていくことを選択する。そうそう、それでいいんだ。人は過去を越えて今を生きていくしかないからね。かようにして『未来警察ウラシマン』は、東京暮らしに疲れた地方出身の中年の背中をポンと押してくれる傑作SFポリスアクションなのである。
カタリベ: 吉井 草千里

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