「愛の不時着」ヒョンビン主演『コンフィデンシャル:国際共助捜査』

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「愛の不時着」のヒョンビンが北朝鮮の特殊捜査員を演じるアクション映画が公開

韓国を舞台に、北朝鮮・韓国・アメリカの捜査官が互いの国の真意を探り合いながらも協力し、国際犯罪組織のリーダーと消えた10億ドルを追うー。映画『コンフィデンシャル:国際共助捜査』は『コンフィデンシャル 共助』(2017)の続編で、韓国において公開から5週連続で興行成績第1位を記録したヒット作である。

主人公の寡黙な北のエリート特殊捜査員リム・チョルリョンを演じるのはヒョンビン。アジアに留まらず、欧米にまで人気が広まったテレビシリーズ「愛の不時着」後、初となる主演映画だ。

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相棒となる南のベテラン刑事カン・ジンテには韓国映画界きっての名バイプレイヤー、ユ・ヘジンが扮し、ヒョンビンと対照的なキャラクターを軽妙に演じている。また本作から加わるFBI捜査官・ジャックを、韓国ドラマ「私の名前はキム・サムスン」(2005)でヒョンビンと共演したダニエル・ヘニーが演じ、新しい風を吹き入れた。

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<STORY>

韓国の地に降り⽴った北朝鮮のエリート特殊捜査員リム・チョルリョン。彼の任務は、北から逃亡した国際犯罪組織のリーダーと消えた10億ドルの行方を追うこと。北から「国際共助捜査」の要請があり、捜査の失敗で左遷されていた南の破天荒なベテラン刑事カン・ジンテは、現場復帰をかけ相棒に志願する。この2人、実は2度⽬のタッグで、チョルリョンに恋するジンテの義妹ミニョンは彼との再会を⼼待ちにしていた。

互いの真の⽬的や機密情報を隠しながらも、リーダーの隠れ家に踏み込んだ時、FBI 捜査官のジャックが現れる。互いを信じ切れないゆえの激しい口論の末にチームを組み直した3者・3国の前に、驚愕の⿊幕が⽴ちはだかる…。

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前作は韓国で780万人を動員 大ヒットアクション映画

5年前に公開された前作は韓国で780万人を動員する大ヒットを記録した。緊迫感に満ちた派手なアクションは本作でも健在だ。とりわけ印象的なのが、オープニングシーンであるニューヨークの街中での銃撃戦。本作のプロダクションデザイナーは約半年かけてニューヨークのソーホーの街並みをセットで作り、CGと組み合わせてリアルな再現に成功した。イ・ソクフン監督が「観客の期待値を上回るアクションシーンになったと思う」と胸を張るだけあって、映画の冒頭から迫力満点で、ぐいぐいとスクリーンに引きこまれる。

韓国の高速道路を疾走するカーチェイス、落ちれば命がない高層ビルの屋上での格闘とワイヤーアクション、爆発の危機が迫る時限爆弾…。緊迫したシーンが続く一方、ジンテが見せる恐妻家ぶりや、堅物のチョルリョンと一途なミニョンのすれ違う会話などユーモラスな場面も随所にちりばめられている。アクション一辺倒にはならないメリハリをつけたストーリー展開で、2時間超の長さを感じさせない。

前作でタックを組んだ2人の刑事に、本作ではダニエル・ヘニーが演じるFBI捜査官のジャックが加わった。大胆かつ繊細、そしてクレバーなキャラクターで、立場が異なる者が協力する共助捜査にさらに深みを持たせている。

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イ・ソクフン監督は「キャラクターがそれぞれの役割を持って登場するようにシナリオ構成を考えた」と語っているが、その意味でも、ミニョンの存在感が前作から大きく高まっている。

天真爛漫なミニョンに扮するのは韓国のガールズグループ「少女時代」のメンバーのイム・ユナ。映画やテレビドラマで女優としての活躍も目覚ましく、本作では思いがけない形で共助捜査に協力することになるミニョンを愛らしいキャラクターとして見事に演じきった。

南と北は真に理解し合えるのか

北と南の刑事がタッグを組んで共助捜査を進めるが、捜査に行き詰まると互いの信頼感が揺らぎ、不信感が口をついて出てくる。「南と北は真に理解し合えるのか」という問いかけは、前作から一貫して作品の通奏低音として流れている。

チョルリョンを慕うミニョンが痺れを切らして、自分のことをどう思っているのかを問い質す場面がある。チョルリョンは正面から答えずに、朝鮮半島の分断を理由に煙にまいてしまう。こう書いてしまうと重たいシーンのようだが、軽やかな語り口とまっすぐな反応が描かれるので、韓国の観客はどう受け止めるのだろうと考えてしまった。

本作を見る前に、ぜひ前作を見てほしい。過去について登場人物の発言の意味するところが理解できるだけでなく、何より登場人物の進化が見て取れるのが興味深い。3作目を期待したい作品である。

文:堀木三紀(映画ライター/日本映画ペンクラブ会員)

<作品データ>
『コンフィデンシャル:国際共助捜査』
監督:イ・ソクフン
出演:ヒョンビン、ユ・ヘジン、イム・ユナ(少女時代)、ダニエル・ヘニー、チン・ソンギュ
韓国/カラー/シネスコ/5.1ch デジタル/129分/字幕翻訳:根本理恵/原題:공조2: 인터내셔날
配給:ギャガ
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公式サイト: https://gaga.ne.jp/confidential/2023年9月22日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

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堀木 三紀

映画ライター/日本映画ペンクラブ会員

映画の楽しみ方はひとそれぞれ。ハートフルな作品で疲れた心を癒したい人がいれば、勧善懲悪モノでスカッと爽やかな気持ちになりたい人もいる。その人にあった作品を届けたい。日々、試写室に通い、ジャンルを問わず2~3本鑑賞している。(2015年は417本、2016年は429本、2017年は504本、2018年は542本の映画作品を鑑賞)

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