老舗「ニコニコ饅頭」地震に負けず再開 南阿蘇村立野

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立野駅前で営業を再開した「ニコニコ饅頭」4代目店主の高瀬大輔さん(右)と父親の忠幸さん、母親の清子さん=22日、南阿蘇村
立野駅名物の「ニコニコ饅頭」

 まんじゅうが鉄路の記憶を呼び覚ます-。南阿蘇村の立野駅前の老舗「ニコニコ饅頭[まんじゅう]」がJR豊肥線と南阿蘇鉄道の不通に負けず、熊本市に新たな売り場を見つけた。4代目店主の高瀬大輔さん(43)は「地震には負けん」とあんこをくるむ。

 1907(明治40)年に創業し、96年まで続けた立野駅ホームでの立ち売りが名物だった。8個入りパックが400パック売れた日も。近年は中国や韓国などの外国人観光客も訪れ、昨年は約1万4千パックを売った。

 熊本地震で、そのホームから乗客の姿が消えた。店は建物こそ無事だったが、あんと生地をこねる機械や冷蔵庫などが倒れ、作るのが難しくなった。高瀬さんは「これじゃ商売にならん。廃業するしかないのか」と落ち込んだ。

 店の片付けは、先代の父忠幸さん(79)が手伝ってくれた。村内の被災者からは「一緒に頑張るばい」と背中を押された。店の看板を下ろすわけにはいかない。気持ちを奮い立たせた。

 4月下旬にガスが復旧し、水も確保。機械は正常に動いた。いつでも、まんじゅうを作れる。でも、買いに来る人はいない。村外に販路を探すと、食品スーパーの「鶴屋フーディワン」(熊本市)が店内販売を快く引き受けてくれた。

 5月10日に営業を再開。フーディワン浜線店に50パック(1パック8個入り400円)を卸している。一口サイズで、ほのかに甘酒が香る皮に甘さ控えめのこしあん。1世紀余り変わらぬおいしさは売り場を変えても人気だ。昼前に完売する日もあるという。

 駅前の店にも、少しずつだが客足が戻ってきた。「苦境でも一歩ずつ前に進む。立野の急坂をゆっくりと登る列車のように」。高瀬さんは自店の将来を立野の鉄路に重ね、生地をこねる手に力を込めた。(小野宏明)