通学時間帯に線状降水帯 休校? 自宅待機? 安全が最優先 高校側「家庭でも判断を」

14日早朝に長崎県南部に線状降水帯が発生。大雨の影響で公共交通機関にも乱れが生じた=長崎市尾上町、JR長崎駅

 長崎県内は先週14日に南部、15日に北部で線状降水帯が発生し、大雨に見舞われた。急激な天候の変化が通学時間帯と重なり、学校は休校や始業を遅らせるなど対応に追われた。「これほど予測が難しいケースは経験がなかった」(長崎市の県立高教諭)。長崎、佐世保両市の複数の高校を取材した。
 14日朝、長崎新聞社の双方向型報道窓口「ナガサキポスト」に、県立高に通う男子生徒から「学校から何の連絡もなく、バスに乗った後に『様子を見て登校判断してください』と連絡が来ました。手遅れ」と不満の声が寄せられた。この生徒によると、以前の大雨時にも同じようなことが起きたという。
 各校はどのような基準で判断しているのか。県教委によると、県立高の荒天時の対応について、一律の基準は定められていない。校区が限られる小・中学校と異なり、高校は通学範囲が広く、登校の手段もさまざまなため、「一律の対応は難しい」からだ。基本的には、学校長が地域の気象状況や公共交通機関の運行状況などを基に判断するとしている。
 今回、判断を困難にした要因の一つが線状降水帯の発生時間だ。長崎市のある県立高は、午前6時時点の警戒情報などで対応を判断する基準を設けていた。長崎地方気象台によると、14日に県南部に線状降水帯が発生したのは同6時20分ごろ。この学校が休校の目安としているレベル4相当の「土砂災害警戒情報」が発令されたのは同7時だった。すぐに「自宅待機」のメールを保護者に送ったが、一部生徒はすでに登校中だったという。
 公共交通機関の運行状況も学校側の判断に影響を与えた。15日午前4時半ごろ、県北部に土砂災害警戒情報が発令。佐世保市のある県立高は、電車が午前運休の見通しとなり、同6時前に「登校時間を遅らせる」と決定。同8時ごろには小康状態となったため、「午後からの登校」をメールで連絡した。しかし、同9時半に線状降水帯が発生。登校できたとしても電車が止まり、帰宅できなくなる可能性があるとして、結局休校にした。
 一方、長崎市のある私立高は台風時以外の対応を定めておらず、連絡が遅れ、保護者からの問い合わせが相次いだという。以前よりも自然災害が頻発する現状を踏まえ「早期に対応を考える必要がある」とした。
 予測が難しい天候の変化に応じ、学校が判断し、各家庭に連絡する、という一連の流れにはどうしてもタイムラグが生じてしまう。そのため、各校は生徒の安全を最優先に考え、「学校からの連絡がない場合も安全に登校できるかどうか、家庭でも判断してもらえれば」と協力を呼びかける。
 天候や交通事情で登校できなくても、学校に理由を連絡すれば欠席や遅刻扱いにはならないとしている。佐世保市の別の県立高の教諭は「天候が悪くても真面目に登校する生徒が多いが、(症状があれば登校を控える)コロナ禍を経験し、以前と比べ『皆勤』という評価も変化している。状況に応じて判断してほしい」と話した。


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