西九州新幹線開業1年アンケート 「速い」「快適」「乗り換え面倒」 長崎 /根強い全線フル待望論 佐賀/在来線本数減少に不満

 西九州新幹線(武雄温泉-長崎)開業から、はや1年。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト(ナガポス)」と佐賀新聞の双方向報道「こちらさがS編集局(こちさが)」の合同企画として、長崎、佐賀両県民に呼びかけ、乗車した感想や利用しない理由などをアンケートした。利用者からは、速さや快適性の向上を喜ぶ声が上がる一方、博多直通ではなく途中で乗り換える負担が生じ、在来線の本数減少など利便性低下に不満が寄せられた。 アンケートは9月9~12日にLINE(ライン)で実施。計943人(ナガポス448、こちさが495)から回答があった。
 既に利用した人(366人)の8割以上が「速い」または「快適」と答えた。嬉野市の70代女性は「長崎県内の娘宅に短時間で行ける」。長崎市の50代女性も「座り心地、前の席との間隔、清潔感-。本当に快適な時間」と満足していた。
 ただ、本県から博多に行く場合、武雄温泉駅でリレー特急に乗り換えなければならず、「あっという間に(武雄に)着いて、あまり乗った気がしなかった」(長崎市・50代男性)、「早く博多までつなげてほしい。乗り換えは面倒」(同、50代女性)といった不満も。利用者のうち、全線フル規格化を望む声は本県は6割余り、佐賀県は1割強あった。「トンネルが多く、ほぼ景色は見えず残念」(武雄市・50代女性)と車窓を見てがっかりする人も1割ほどいた。
 一方、まだ利用していない人(577人)の理由は「機会がない」が6割を占めて最多。「近くに駅がない。佐世保経由のはずが裏切られたから腹立たしい」(東彼川棚町・40代男性)、「県北からのアクセスが悪い」(松浦市・30代男性)のように、沿線から遠い地域の住民が効果を実感できていない状況も垣間見えた。佐賀県民からは「長崎までなら車で行った方が楽しい」(鹿島市・20代女性)、「料金が高すぎる」(伊万里市・40代男性)という意見が相次いだ。 

 開業に伴い便利になったこと、不便になったことも尋ねた。
 不便と指摘された点は、乗り換えや在来線の本数減少がほとんど。乗り換えを嫌った長崎市の40代女性は「今は九州号などのバス一択」。同市の浦上駅周辺に住む40代男性は「以前は徒歩で行って特急かもめに乗れたが、長崎駅まで移動する必要がある」と嘆く。佐賀県民からも「長崎線の本数が減って、高校生の娘を車で送迎しないといけないことが増えた」(白石町・40代女性)、「博多への行き帰りがかなり不便に。日常生活が観光の犠牲になっている」(太良町・60代女性)などのぼやきが聞こえる。 一方、開業メリットとして「速い」や「快適」のほかに、交流人口の増加を挙げる人もいた。関東出身で長崎市在住の50代女性は「新幹線を使って他県から来る人や来たいという人が増えている」。島原市の70代女性も「諫早駅で新幹線を降りて、島原鉄道を利用する観光客が増えつつある」と歓迎する。
 「長崎駅前が都会的になってワクワクするお店が増える」(長崎市・50代女性)、「道路を含め新大村駅周辺が開発され、活気づいてきた」(大村市・60代男性)など駅開発に期待する声も少なくなかった。福岡県境に近い基山町の30代男性は「嬉野や武雄のまちは大きく変貌し、にぎわいづくりのための市民発の取り組みなどもあり、いい変化があっている」と評価した。

長崎県民らによる「ナガポス」への回答で目立った言葉
佐賀県民らによる「こちさが」への回答で目立った言葉

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 アンケートは世論調査とは異なり、多様な意見を聞き取るのが目的です。ご協力ありがとうございました。

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