地震想定し備蓄率高まる 都内企業の防災対策好事例

■中小への防災意識波及が課題

今年9月1日で関東大震災発生から100年の節目の年を迎えたが、その認知度を帝国データバンクが調べると全国平均は42.5%で、東京都の企業に限定しても52.9%にとどまる。一方、震災への備えの取組割合は全国平均で38.0%、東京都の企業で50.7%となり、都内企業の地震に対する防災意識は他の都道府県よりも高い。


東京商工会議所が都内会員企業1353社から回答を得た2023年度調査によると、事業継続計画(BCP)策定率は35.0%と、前年度調査比2.8ポイント増と7年連続で上昇。BCPで想定するリスクは「地震」が93.4%、備えが必要なリスクも「地震」が98.7%でともに最も高い。


地震対策の肝となる従業員向けの備蓄状況をみると、「飲料水」は84.3%、「食料」は74.7%、「災害用トイレ」は57.1%、「毛布」は57.8%が量に関係なく「備蓄あり」と回答。対前年度比は順に同0.8ポイント増、同13.3ポイント増、同22.4ポイント増、同0.9ポイント増といずれも上昇しており、特に食料とトイレの備蓄がこの1年で急速に進展したことを示した。


備蓄に関する個別企業の取組については、東京都が「一斉帰宅抑制推進企業」の好事例として紹介している。

備蓄の量で目を引くのは、アイケア製品を取り扱う日本アルコンだ。最大1週間のオフィス滞在を可能にするために、飲料水・食料などを備蓄。3日分は、ごはん・パン・パスタの主食に加え、野菜ジュースやおやつまでバラエティに富む食事を準備し、さらに4日分は25年の保存可能なサバイバルフーズを用意している。


備蓄する品目に着目してみると、簡易トイレや毛布のほか、充電器、ガスボンベといったマストアイテムに加えて、ライト、マスク、薬品、使い捨てカイロ、ブルーシート、ランタン、予備のメガネ、水なしで使えるシャンプー、リヤカーなど多彩なのも特徴といえる。NTT都市開発は、ヘルメットや手袋、笛なども配布。またウォルト・ディズニー・ジャパンやキヤノンマーケティングジャパンなどでは、個人のアレルギーに配慮して食料品を準備する徹底ぶりだ。


備蓄スペースのアイデアも、各社の参考となるはずだ。コナミビジネスエキスパートは、従業員が1カ所の配布場所に集中してしまった東日本大震災時の教訓から、各フロアごとに3カ所に分散して備蓄。他方で、製造業のテツゲンなどは、倉庫に全員分を備蓄していた取扱いを改め、備蓄品を各人に配布している。


東京都では13年4月施行の帰宅困難者対策条例で、事業者に従業者の施設内待機による一斉帰宅の抑制、3日分の飲料水・食糧等の備蓄などの努力義務を課す。ただ内容も含めて条例を把握しているのは、大企業が3.3ポイント増の65.8%、中小企業が同5.7ポイント減の28.1%で、中小規模の企業に対する周知啓発が大きな課題となっている。

© 株式会社労働実務