森にたたずむウイスキー工場 サントリー白州蒸溜所 見学施設やツアー刷新 ものづくりへの思い伝える

南アルプスのふもとに鬱蒼と広がる森。そこに半世紀にわたりたたずむのは、ジャパニーズウイスキーのものづくり拠点「サントリー白州蒸溜所」(山梨県北杜市)だ。50周年を機にリニューアル。10月2日から一般公開される。

サントリー創業者の鳥井信治郎氏が、山崎蒸溜所(大阪府)でウイスキーづくりを始めてから今年で100年。山崎の竣工から50年後の1973年、豊かな森の中に造られた山崎蒸溜所は「森の蒸溜所」として知られる。同じ敷地内に工場がある「サントリー天然水」にも使われる、花崗岩に磨かれた良質な水をはじめとした恵まれた自然条件や設備の違いから、山崎とは個性の異なる原酒を生み出している。

山崎蒸溜所と合わせ、改修には100億円規模を投資。24年には年間16万7千人の来場を見込む。このほど工事が完了し、9月15日に報道陣向けに公開された。

「竣工当時は公害が社会問題となっていた時代。自然との調和を目指すサントリーの企業理念を体現する場所として、この地に建設した」。同社常務執行役員原酒開発生産本部長の栗原勝範が説明する。敷地内にはバードサンクチュアリも設け、約50種類が生息する野鳥は環境のバロメーター。水をはぐくむ森を次世代につなげる「水育」にも取り組む。

「リニューアルにあたっては、ものづくりの現場をお客様に見ていただき、ストーリーとしてお伝えすることをとくに意識した」(栗原氏)。

大小さまざまな蒸留釜から多彩な味わいの原酒が生まれる

白州蒸溜所ならではの魅力を体感できる新たな施設展示や見学ツアーを導入。蒸留所と天然水工場との共通玄関となる「ビジターセンター」には花崗岩を随所に取り入れ、水や森の恵みが感じられる要素を盛り込んだ。新設したジオラマにより、敷地全体を視覚的に理解できる。バードサンクチュアリでの取り組みに関する展示や、鳥の声が聴ける集音機なども設置した。

「コンセプトは『LIVE!』。南アルプスの豊かな水と働く人の共同作業で造られていることを、五感で感じてもらえるよう取り組んだ」(白州蒸溜所 有田哲也工場長)。

「白州」をはじめとしたウイスキーのテイスティングやフードペアリングが楽しめるセントラルハウスにはギフトショップも併設。樽材でできた食器や雑貨など、蒸留所ならではのグッズを販売する。

ツアー内容も刷新。蒸留所の見学やテイスティングができる「ものづくりツアー」(税込3千円)のほか、見学エリアなどの内容をグレードアップした「同 プレミアム」(5千円)の2コースを展開する。

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