【MLB】ドジャースの剛腕リリーバー 7年ぶりの母との再会

写真:母イスマリアさんに手を挙げるグラテロル

MLBは国際色豊かなリーグだ。今季の開幕時にはアメリカ国外出身選手が28.5%を占め、19ヵ国から269人もの国外出身選手がロースター入りした。中でもドミニカやベネズエラなど中南米の国々は多数の選手を輩出している。MLBのドラフト指名を受けることができないそれらの国の選手は、16歳や17歳という若さでMLB球団と契約し、アメリカンドリームを夢見て厳しい競争社会に身を投じるのだ。

ベネズエラ出身の25歳右腕ブルスダー・グラテロルもそのうちの一人。2014年8月にツインズと15万ドルで契約した当時、グラテロルは16歳になったばかりだった。

2016年にはトミー・ジョン手術で長期リハビリを強いられたが、2017年にはアメリカ国内のマイナーでデビューし、有望株として評価されていた2019年9月に21歳の若さでメジャーデビューを果たした。さらに2020年開幕前に前田健太とのトレードでドジャースへ移籍すると、平均99マイル(159.3キロ)前後のシンカーを武器にリリーフ投手として台頭。今季はドジャースで65試合に登板し防御率1.26とブルペンの要として活躍している。

そうして確固たるメジャーリーガーとしての地位を築いたグラテロルは、実は長年母親と会うことができていなかった。ベネズエラにいる母イスマリアさんが最後に息子の投球を見たのは、プロ入り後最初にドミニカのリーグに所属していた16歳の時だ。母国ベネズエラの規制と政治情勢のため、イスマリアさんは息子が渡米して以降一度もアメリカに入国することができなかった。

しかし、9月19日(日本時間20日)、ついにこの親子に再会の時が訪れた。重要な書類が揃ったことでようやくアメリカへの入国が許されたのだ。ロサンゼルスの空港に降り立った母を迎えたグラテロルは、母を涙ながらに抱きしめた。

19日のタイガース戦、グラテロルは1点ビハインドの8回に登板し三者凡退に抑え、チームの逆転勝利に貢献した。メジャーの舞台で投げる息子の姿を初めて生観戦した母に手を挙げ、グラテロルは涙をこらえながらダグアウトへ戻った。

グラテロルはその翌日の試合にも登板し無失点投球を披露した。これで21試合連続無失点を記録し、いよいよ手が付けられない怪物リリーバーになりつつある。

21日のジャイアンツ戦、母イスマリアさんは始球式を務めた。もちろん捕手役は息子だ。会えなかった7年分の想いをこめて投じられた1球は、ストライク投球で息子のグラブにおさまった。イスマリアさんは今季のポストシーズン終了までアメリカに滞在するようだ。ドジャースはすでに地区優勝し、ポストシーズン進出を決めている。

グラテロルは2020年ワールドシリーズに登板しリングを手に入れ、その後結婚。今年は娘も生まれた。メジャーデビューも含め、これまではどの瞬間も母イスマリアさんと共有することはできなかった。ワールドシリーズ制覇の栄光を初めて母と喜び合う瞬間のために、この秋グラテロルはさらに強力な投手となって他球団の前に立ちふさがるのだろう。

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