真鶴町長がリコールで失職、そして選挙戦へ!今のうちに知っておきたい日本のリコールの全て

神奈川県・真鶴町で9月24日、選挙での不正行為を問われていた松本一彦市長に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票が行われ、賛成票が過半数を占めてリコールが成立。松本市長は失職し、これに伴う町長選挙が50日以内に行われる見通しです。この記事では、リコールのルール、これまでの国内の事例やその後の選挙の傾向が見られるのかなどを一気に紹介します。気になるリコールの要点を押さえておきましょう!

リコールってなに?どうすればできる?

リコールとは、日本語で言うと「解職請求」を指します。住民が地方公共団体の首長・議員の解職や議会の解散を、その団体の選挙管理委員会に対して求めることができです。

よく経済ニュースで出てくる、自動車や家電などの欠陥がみつかった製品を生産者が公表し、回収して無料で修理する「リコール」とは別の意味です。

解職請求の「リコール」が成立する条件は段階的にあり、まず住民投票に必要な有権者の3分の1以上の署名を集めること、そして請求後の住民投票で過半数の賛成を得ることです。

今回の真鶴町では地元住民が町の有権者の約4割に相当する2350人分の署名を集め、選挙管理委員会に提出。9月24日に実施された住民投票では、有効投票数3582票のうち賛成が2204票、反対が1378票でした。賛成票が過半数を上回り、松本町長は即日失職となりました。投票率は59.4%でした。

松本・元市長は初当選した2020年9月の真鶴町長選挙の際、町職員の立場を利用して自治体が管理する選挙人名簿を持ち出してコピーし、有権者へのハガキの郵送など自身の選挙活動に利用した問題が発覚して2021年11月に辞職しました。その翌月の2021年12月の真鶴町長選挙では再出馬して再選を果たし、2期目を務めていましたが、一部の住民が町政が混乱しているとして署名を集め、住民投票に至りました。

一方で、真鶴町も一連の問題を明らかにすべく第三者委員会を2021年12月に発足。2022年4月にまとめられた調査結果では、名簿の持ち出しは刑法上の窃盗罪や、地方公務員法に定められた守秘義務にも違反する行為としました。さらに、松本氏が町議選立候補予定者にも名簿のコピーを渡すよう選挙管理委員会に指示していたことが明らかになり、こちらは公職選挙法に規定された「選挙の自由妨害」に問われるべき行為だとしました。同町はこの第三者調査を踏まえ、松本氏らを刑事告発していました。

選挙で選ばれたのに選挙で辞めさせられる

なぜリコールがあるのか

一定数以上の署名を集めて公職者の罷免を請求できるリコールは、日本の間接民主制を補完する仕組みとして存在する「直接請求」の一つです。(他にも、条例の制定や改廃、副知事や副市町村長などの解職も対象になります)。

地方自治法に規定されている制度で、かつ憲法で保障された「権利」でもあります。戦後に急速に進んだ民主化の一環で、地方自治の発達にのために地方自治の運営に民意を反映することや、住民が自治を監視できるようにとの考えのもとに認められました。

日本では戦後、住民が選挙で選んだ代表者が行政を行う「間接民主主義」が導入されましたが、行政が住民の意思に反した場合に住民が意思を示す手段です。投票して終わりではなく、その先の任期中の働きを見守ることも大切なのです。

過去の事例は?選挙はどうなる?

最近の首長の解職請求にはどのようなケースがあり、リコール後の選挙にはどのような傾向があるのでしょうか?

直近では静岡県河津町で2017年、当時の相馬宏行市長が推進していた複合施設建設を巡ってリコールが成立しました。その後、行われた2017年11月の河津町長選挙には、相馬氏も出馬しますが、副町長だった岸重宏氏(現市長)との一騎打ちとなり、岸氏が制します。

2012年には山梨県西桂町で、有権者にウナギを送った問題から町長の解職と町議会の解散を求めるダブルリコールに発展しました。当時の石田寿一町長は解職後の2012年11月の西桂町長選挙には立候補せず、無投票で新町長が誕生しました。

リコールをめぐっては、署名を集めるハードルなどからそれほど頻繁には起きていないようです。この裏で、署名を偽造する問題も全国で散発しており、2021年には愛知県の大村秀章知事へのリコール運動で大規模な署名偽造が問題になりました。

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任期満了を前に自治体のトップが住民のジャッジで職を解かれて不在となる異例の事態といえます。1日でも早い地方自治の安定化が望まれます。

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