「“びっくり箱”のようなお楽しみがいっぱい。歌っていて楽しいです!」――「タツノコプロ創立60周年記念特別公演」出演・堀江美都子インタビュー

「ハクション大魔王」、「科学忍者隊ガッチャマン」や「タイムボカン」など、日本のアニメ史に輝く名作を数多く作り続けてきたタツノコプロ。その創立60周年を記念したコンサート「タツノコプロ創立60周年記念特別公演 ~Tatsunoko 60th Legends~」が、今年1月9日、東京・Zepp DiverCityで開催された。文字通り、タツノコプロの60年の歩みを、作品を彩ったアニメソングで振り返ろうという趣向で、ささきいさお、山本正之、影山ヒロノブらゆかりのシンガーが集結し、力強い歌声を聴かせてくれた。このたび、この公演の模様を、BS松竹東急で放送することが決定。今回は、アニソン界のレジェンドの1人であり、コンサートでも変らぬ伸びやかな歌声で魅了した堀江美都子に話を聞いた。

――まずは、「タツノコプロ創立60周年記念特別公演 ~Tatsunoko 60th Legends~」に出演された感想をお聞かせください。

「タツノコプロさんは私を生み出してくれた存在ですので、出演できて光栄でした。御奉公…というとちょっと違うかもしれませんけど(笑)、恩返ししたいと思って歌いました」

――コンサートの中で、「タツノコプロとは11歳の頃からの付き合い」だとおっしゃっていましたが、当時のことで印象に残っていることはございますか?

「最初は『紅三四郎』の2代目の主題歌を歌うためのオーディションでした。7人ぐらいの女の子が集まって1人ずつ歌って、私はオープニングに選ばれましたが、“少年みたいな透明感のある声がよかった”という理由だったみたいです。私は、よく分からず『歌ってごらん』と言われて歌っただけですが(笑)。選ばれてうれしかったのかな。ただ私、美樹克彦さんが歌っていた初代の主題歌が大好きで。毎週、それが流れるのを楽しみにしていたのに、来週から自分の歌になるのかと少し寂しかったのを覚えています(笑)」

――コンサートでも歌っていましたが「紅三四郎」の主題歌は、すごく勇ましい曲ですね!

「演歌ですよね。最初に聴いた時には、こんな歌は歌ったことないという印象でした。当時のレコーディングは、スタジオに作詞の先生、作曲の先生、原作の先生、テレビ局の人、スポンサーさん…ギャラリーが何十人もいました。たくさんの大人が私の歌を聴きながらなんだかんだ言っていたので、すごくドキドキしました。でも、原作であるタツノコプロの吉田竜夫先生は、とても優しい方で、11歳の私に描き下ろしのセル画をくださって。すごく感激しました」

――実際、初めてのレコーディングは緊張されましたか?

「まだ子どもだったので、よく分からずに歌ったような気がします。それに私、いざとなると大きな声が出るのです(笑)。そういえば、当時は1日中しゃべらないでいるくらいおとなしい子でした。でも、マイクの前でいざ歌うと、大きな声を出すので、先生方が驚いていました(笑)。歌詞の世界観を想像すると楽しくなって、元気に歌えちゃいます」

――タツノコプロの歌をたくさん歌ったことで、いろいろと成長できたとおっしゃっていましたが、具体的にこの曲によって、こんなところが変わった、成長したと思ったエピソードがあればお聞かせください!

「この曲がというより、タツノコプロにはいろいろなタイプの作品がありますよね。冒険物語もあるし、情操を育む作品や、ちょっと楽しくてワクワクする作品もある。その歌を歌うことで、いろいろな感情を育んでもらったと思います。歌でいろいろな感情を表現しなくてはいけないので、歌手としてのスキルはすごく上がったと思います」

――以前「歌詞を読んで共感できるポイントを探す」ことが、歌を上手に表現できるコツといった趣旨のお話をされていたと思うのですが、コンサートで披露したタツノコの曲で、最も共感できる曲、歌詞は何でしょうか?

「共感と想像が大事なのです。アニソンは、現実にはあり得ないことを歌ったりもしますよね。コンサートでも『てんとう虫の歌』の『ぼくらきょうだい てんとう虫』を歌いましたが、あの作品は両親を亡くしてきょうだい7人で頑張る物語で、私にはそんな経験はありません。そこを想像することが大事です。それと、歌って“この歌詞が好きだな”“このメロディーが好きだな”というポイントがあると、うまく歌えるのです。人間は、好きなところは必ずうまく歌うので、そこを軸にして、歌を作り上げるようにしています。今、例に挙げた『ぼくらきょうだい てんとう虫』だと、きょうだい愛を強調する歌詞が随所に出てきて、そこが一番言いたいところだと思うし、共感できるポイントでもありますね」

――タツノコプロのアニメソングの魅力はどこだと思いますか?

「びっくり箱みたいなところかな。驚かされるような“お楽しみ”がある曲が多いと思います。曲調もいろいろありますし、歌詞も擬音ばっかりの曲があったりしますし。しかも、みんなが心血注いで作っているので、作品によってカラーが違うのに、アレンジはどれもすごくキャッチーで曲がパワフル。楽しいですよね。『ハクション大魔王』なんてすごくファンキーなアレンジだし、イントロのディストーションギターなので、当時、ほかのアニソンでは使われていないと思います」

――音楽的な新しさを取り入れながらも、分かりやすく楽しいというのは、アニメソングの鑑(かがみ)みたいな感じですよね。

「そうなんですよね。カッコいい一色でもないし、かわいいだけでもない。全部あるのがタツノコプロなのだと思います!」

――そういった多角的な魅力のあるアニメソングをライブで歌う時に気を付けていることはございますか?

「歌っている自分だけのものではないということは、常に意識しています。聞いて育ってきた人たちの思い出を未来に運ぶ…そういうものだと思うので、それを崩さないように歌っています。自分が好きだったアニメの歌を、全然違う感じで歌われたら寂しいと思いますし、今風にフェイクを入れて歌われても、それは駄目でしょう(笑)」

――では、最後にライブの見どころを教えてください!

「タツノコプロの60年というのは、ほぼ日本のアニメの歴史と重なります。コンサートでは、今のアニメがどうやってできて、どう進化してきたのかも感じてもらえると思います。それと、映像もふんだんに使われていますので、当時、アニメを見ていたように楽しんでもらえるんじゃないかな。それから、放送は1月の公演ですが、実は夏に大阪でもコンサートをやりました(7月7日)。そこでは声を出しても大丈夫だったので、皆さんが一緒に歌ってくれてこそのアニソンなのだなと、あらためて思いました。会場から声が聞こえてくると一体感も生まれますし、何より歌っていて楽しいです。今回は、テレビの前でぜひ一緒に歌ってください!」

【プロフィール】

堀江美都子(ほりえ みつこ)
3月8日生まれ。神奈川県出身。1966年に「ちびっこのど自慢」に出演したことで注目を集め、69年にアニメ「紅三四郎」の主題歌を歌ったことでアニメシンガーの道へ。以降、100万枚を超える大ヒットとなった77年の「キャンディ・キャンディ」をはじめ、数多くのアニメソングを歌唱。手掛けた楽曲は、これまでに1200曲を超える。また、声優としても「愛少女ポリアンナ物語」など数多くの作品に出演している。

【番組情報】

「タツノコプロ創立60周年記念特別公演 ~Tatsunoko 60th Legends~」
BS松竹東急
10月1日 午後6:30〜9:00

アニメーション制作プロダクション「タツノコプロ」創立60周年を記念し、ささきいさお、堀江美都子、山本正之、影山ヒロノブらアニソン界のレジェンドによるスペシャルライブの模様を放送。懐かしのタツノコアニメの主題歌を披露するステージや、堀江のMCでクリエーター陣や声優を交えたトークコーナー、水木一郎さんをしのぶ企画も届ける。

文/竹内伸一 撮影/為広麻里

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