中期【ザ・チェッカーズの魅力】多忙を極める中、バンドの主軸にはアルバム制作があった  デビュー40周年! ザ・チェッカーズのオリジナルアルバム11枚を最新リマスター!

彼らの本質である不良っぽさを体現した「俺たちのロカビリーナイト」

「涙のリクエスト」で大ブレイクを果たしたザ・チェッカーズ(以下チェッカーズ)は、その後の哀愁三部作、「哀しくてジェラシー」「星屑のステージ」「ジュリアに傷心」でその人気を不動のものとする。当時のシングルのソングライティングを担う売野雅勇×芹沢廣明のコンビネーションは彼らのパブリックイメージをより堅固なものとした。

しかし、これにちょっとした異変を感じたのは、1985年7月5日にリリースされた「俺たちのロカビリーナイト」だった。ジャケットには、これまで一連のシングルに使用されていたチェックをあしらった花模様のロゴが使用されていなかった。つまり、アイドル性を排除しながら、彼らの本質である不良っぽさを体現したフィンガースナップの音から始まるマイナー調のメロディは、これまでのシングルにはなかった魅力で溢れていた。

「俺たちのロカビリーナイト」で感じた印象は、その2年後にリリースされる初のセルフプロデュースアルバム『GO』で結実される。チェッカーズは『GO』で本領発揮ということになるのだが、そのモチベーションはロックンロールスピリットへの原点回帰だった。原点に戻りながら、多様性を厭わず一歩前へ進んだ『GO』はバンドとして、ミュージシャンとして、彼らの決意表明であった。つまりチェッカーズの実質的なファーストアルバムである。ここから鶴久作品6曲を収録し賭けに出た『SCREW』、この2枚の独自性をさらに昇華させた『Seven Heaven』まで、つまり、1987年から1989年の3年間をチェッカーズの活動を俯瞰した上での中期としたい。

これまでのイメージを保持しながら音楽性を深めた「I Love you, SAYONARA」

チェッカーズの素晴らしさは、オリジナル路線に舵を切っても、それまで培ってきた売野×芹沢の世界観をバッサリと切り捨てるのではなく、踏襲する部分は踏襲して深めていった部分にもある。

それはつまり、ファンのためである。ファンが置いてけぼりにならないように、試行錯誤しながら創作活動に没頭していった。それが顕著に表れているのが、『GO』に収録された13枚目のシングル「I Love you, SAYONARA」だ。これまでのイメージを保持しながら音楽性を深めるという至難の業をやってのけた。アイドル的なパブリックイメージから見事に脱却しながらも、ファンにとって、チェッカーズはチェッカーズのままだったのである。

多忙を極めながらも、バンドの主軸にはアルバム制作があった

『GO』『SCREW』からの『Seven Heaven』というオリジナリティを深めた3年間は、チェッカーズが活動期に残したオリジナルアルバム10枚を俯瞰した上でも、極めて重要な位置にあたる。売野×芹沢期にも一切手を抜くことなくアルバム収録曲やB面曲でソングライティングに向き合ったキャリアを集大成させる。そして、90年代以降のアルバムでハウスミュージックやUKソウルなど、より深く音楽を探求する礎になった3枚である。

『GO』に収録され、のちに藤井フミヤがセルフカバー、ファンキーチューンのグルーヴに身体を揺らさずにはいられない「TOKYO CONNECTION」、『SCREW』に収録され、シングルヒットも記録した「ONE NIGHT GIGOLO」、そして『Seven Heaven』のオープニングを飾った「Welcome to my planet earth!!」という流れを見ても、ブラックミュージックを礎としたその後の展開を示唆することができる。

チェッカーズは、ファッションやヘアスタイルなど表層的な部分がクローズアップされながらも、9年連続『紅白歌合戦』出場という偉業を成し遂げる。多忙を極めながらも、バンドの主軸にはアルバム制作があった。そんな彼らの音楽性が開花したのが1987年から1989年までの中期である。

Information ザ・チェッカーズデビュー40周年を記念してポニーキャニオンからは『チェッカーズ 40 Anniversaryオリジナルアルバム・スペシャルCD-BOX』としてオリジナルアルバム11枚を最新リマスター、高音質UHQCD仕様にしたBOXとしてリイシュー。

そして11月3日には、彼らのラストアルバムにして最高傑作、『BLUE MOON STONE』を初のレコード化、2枚組LPとしてリリース。さらに11月22日にNHKに残された貴重映像をBlu-ray化した『チェッカーズ〜40 Anniversary〜NHKプレミアムBlu-ray BOX』、12月20日には、1992年12月、日本武道館でのチェッカーズラストライブとなった「FINAL TOUR」の模様をファンからの熱い要望もあり最新のリマスター映像のBlu-ray化したものがリリースされる。こちらの特典映像には新たに発掘された1987年の中野サンプラザでの「GO」ツアーライブ映像の一部が収録されている。

チェッカーズ 40th Anniversary https://checkers40.ponycanyon.co.jp

カタリベ: 本田隆

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