コロナ雇用調整金、膨らむ不正受給 神奈川で36億円超、すでに破産し回収困難も

不正受給を行った社名などを公表している神奈川労働局のホームページ

 新型コロナウイルス禍で雇用を維持するため、特例措置を設けるなどして事業者に支給していた雇用調整助成金(雇調金)の不正受給額が膨らんでいる。これまでに判明しているだけでも県内で36億円を超えた。厚生労働省神奈川労働局は事業者に不正受給額の返還を求めているが、すでに破産するなどして回収が困難なケースも散見される。

◆数人なのに「従業員173人」

 雇調金は、事業者が従業員に支払った休業手当を国が補填(ほてん)する制度で、事業者が労働局に申請して支給を受ける。コロナ禍での雇用の維持を支えた一方で、実際には従業員が働いているのに「休業した」と装ったり、雇用をしていない人を「雇った」と装ったりする虚偽の申請も相次いだ。

 神奈川労働局によると、県内の不正受給はコロナ禍の特例措置が始まった2020年度から今年9月21日時点までで206件に上り、総額は約36億7800万円。年度別では本年度は46件、約20億4169万円で、金額ではすでに前年度(109件、約11億5164万円)を上回っている。

 県内では、実際には数人しかいない従業員数を173人と偽って休業手当を支払ったように装い、雇調金をだまし取ったとして、人材派遣会社の関係者らが県警に詐欺容疑で逮捕される事件も起きている。

 雇調金は企業側が支払う雇用保険料が財源で、不正受給額を回収できなければ支給の増加で悪化している雇用保険財政はさらに逼迫(ひっぱく)する。同局は不正受給をした事業者に対し、不正受給分とその翌月以降に受け取った全額、さらに不正額の2割を上乗せした額の返還を求めているが、これまでの返還額は明らかにしていない。

 同局は申請の処理を担当していた職員を不正受給の調査に当たらせるなど対策に力を入れているものの「回収が難航しているケースもなくはない」といい、担当者は「事業者に逃げられないよう、粘り強く返還を求めていく」としている。

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