【おもしろ小箱】 No.246「森の住人 ヒメネズミ」

▲生後間もないヒメネズミの幼獣

 ヒメネズミは北海道から九州まで広く日本に生息する森に棲むノネズミです。体重は約20グラム、尾の長さは約8センチ、鼻先から尾の付け根までが約9センチのげっ歯目ネズミ科の日本固有種の哺乳動物です。

 山口県では、標高が100メートルを超える山地の森に生息しています。非常に身軽で、木登りも上手です。森の中の樹上に観察用の巣箱を設置すると、その中で出産・子育てをします。

 子育て期間は約3週間、生まれた時には全身に毛はなく、体重はわずか1グラム、3週間後には10グラム近くになり、母ネズミは育児を終えます。子供たちはしばらく一緒にいることもありますが、一カ月もすると別々に生活します。

 ヒメネズミは、日中は地下の巣穴や樹上の洞で過ごし、夜間活動します。地上で木の実を食べたり、木に登り昆虫を捕食したり、自由に森を動き回ります。秋にはドングリ類を運び、巣などに蓄え冬に備えます。

山口県立山口博物館 動物担当学芸員 田中 浩

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