デザイナーの登竜門「装苑賞」受賞 長崎・青雲出身の上村さん 医師の夢からファッションの道へ

受賞作のパネル前に立つ上村さん=福岡市、香蘭ファッションデザイン専門学校

 青雲中・高校(西彼時津町)を経て福岡市の専門学校を3月に卒業した上村英太郎さん(22)=福岡県在住=が、ファッションデザイナーの登竜門とされる「第97回装苑賞」を受賞した。社会に影響を与えるような服作りを目指し、ブランド設立に向け準備を進めている。
 同賞はコシノジュンコ氏や高田賢三氏ら著名なデザイナーを輩出。第97回は6月に公開審査会があった。
 受賞作のテーマは「第3の目」。スーツを基にした形から、ボタンやチャックを外すと六角形が並んだ「ハニカム構造」が表れて袖や裾が広がり、形が大きく変わる。着想のヒントは興味があった相対性理論。スーツを人間の目の象徴と見立て、変化後はそれぞれ虫、鳥、魚の目から見た世界を表した。物事の認識や解釈が視点によって変わることを表現した。
 上村さんは山口県生まれで小学生の時に福岡へ。医師を志し青雲中学・高校へ進み勉強中心の生活を送った。中高6年間は寮生活で、スマートフォンなどは禁止されていたが雑誌は認められており、ファッション誌を読んでいたという。
 高3で現役合格を目指し医学部受験に臨んだが、かなわず。「知らない世界で一から挑戦してみたい」と決意し、浮かんだのがファッションだった。福岡市の香蘭ファッションデザイン専門学校で学び、在学中に受賞作を制作した。
 長崎県で過ごした6年間を上村さんは「今となっては楽しかった思い出ばかり」と振り返る。デザインにはこれまでに培った知識や論理的な思考が生きていると感じるという。今後について「国内外のコンテストに挑戦し、最終的には自分の作る服を喜んでくれる人がいて、社会に何らかの影響を与えられたら」と話している。


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