望月衣塑子記者の暴走と自壊するジャーナリズム|和田政宗 ジャニーズ事務所会見での「指名NGリスト」が騒ぎになっているが、そもそも記者会見とは何か、ジャーナリズムとは何か、それらをはき違えた人物たちにより我が国のジャーナリズムが破壊されることは、ジャーナリズム出身者としても許せない。(サムネイルはYouTubeより)

「指名NGリスト」騒動の本質

今月2日のジャニーズ事務所の記者会見で、指名NGリストなどをもとに、質問の際に当てられなかった記者がいるのではないかと騒ぎになっている。しかし、記者会見において誰を当てるかは主催者側の裁量であり、本来とやかく言われる問題ではない。

私もNHK時代に数々の記者会見に出席してきたが、指名されないことも多々あった。そして、もし指名NGがあらかじめ決められたとしていても、挙手している記者が当該記者のみになれば主催者側は当てざるを得ない。

私は、今回の会見はその性質上、もっと質問時間を取り幅広く記者の質問を受けるべきであったと考えるが、2時間という時間で切り上げたことから挙手していたすべての記者を当てられなかった。また、記者は、記者会見で当てられなかったからそのニュースの取材ができないというわけではなく、独自に様々な角度から取材をすれば良いだけである。

私も政治家になってから、例えば自民党の不妊治療支援拡充議連など各種議連の役員や事務局長として記者会見に答えてきたし、過去には次世代の党の幹事長としても記者会見に臨んできた。いずれも記者の質問が尽きるまで質問に答えてきた。

菅義偉前総理が総裁選に立候補表明した際には、スポーツ紙向けの記者会見で司会を務めたこともある。菅陣営の総裁選選対本部の広報統括を務めていたということもあるが、私であれば突飛な質問や様々なリクエストを仕切ることができるということがあった。

実際に会見では、東スポから「菅さんはUFOの存在を信じますか?」との質問が出たり、「色紙に座右の銘を書いて」と要望があったり、「色紙を持って空手の突きのポーズを取って」とのリクエストにもすべて応えさせていただいた。記者の皆さんは大いに喜び、翌日のスポーツ紙の裏1面ぶち抜きや芸能面1面ぶち抜きで取り上げてくれた。

何の処分を下さない東京新聞

記者会見の肝要は、本当に時間の制約がなければ、でき得る限り質問に答えることであり、何かをかわそうとしても追及は収まらない。

メディア界で言われる言葉に「メディアと犬は逃げれば逃げるほど追ってくる」というものがある。初動対応では、現在わかっていることをすべて公表し謝罪すること、今回のような段階では、わかっていることの全公表とともに真摯かつ徹底的な再発防止策を発表し、でき得る限り長い時間を割いて記者の質問に答えることである。

ただ、今回のジャニーズ事務所の記者会見を考えた時に、東京新聞の望月衣塑子記者が会見場内に入ることから、危機管理上の対応レベルが上がったとみられる。

望月記者はこれまで各種会見等で暴走を続けてきた。例えば、官房長官記者会見においては、的外れな質問や、そもそも事実関係が違う質問、繰り返し同様の質問をして他記者にとっても貴重な質問時間が浪費されてしまうことが常であった。

さらに、国会においても前代未聞の暴挙を犯している。今年6月8日の参院法務委員会の入管法改正案の審議においては、記者として委員会室に入っているのに、審議中に大声でヤジを飛ばしたのである。

国民の負託を受けて行われる国会審議の進行を、記者として妨害した。議会制民主主義を冒涜する前代未聞の重大事案であるが、望月氏本人は反省もせず、東京新聞は何の処分も下していない。

望月記者の行動は活動家の所業

こうした行動に加え、望月氏はジャニーズ事務所の9月の1回目の記者会見でも、10分以上にわたって持論を展開し質問するなどしたことから、ジャニーズ事務所側が警戒するのも当然のことといえる。鋭い追及なら当然真摯に答えるべきだが、会見をメチャクチャにされる恐れがあるのであれば、それに備えるのは当然のことだ。

実際に今月2日の2回目の会見では、望月記者は指名されていないのにマイクなしで質問した。その後も、「一社一問」ルールを無視して強引に質問しようとし、司会者から「最初に申し上げております。一社一問でお願いします。ご協力ください」と注意されたうえ、質問に答えていた井ノ原快彦氏からも、「落ち着いていきましょう」「できる限りルールを守っていく大人たちの姿を、この会見では見せていきたいと僕は思っています。どうかどうか落ち着いてお願いします」となだめられる状況であった。

私は繰り返し本誌においてもジャーナリズムのレベル低下を指摘してきたが、望月記者の行動は、それ以前のもので、ジャーナリストとしての活動ではなく活動家の所業である。

ジャーナリズムとは何かということをはき違えた人物たちにより我が国のジャーナリズムが破壊されることは、ジャーナリズム出身者としても許せないし、このようなものがジャーナリズムかと国民に認識されることは忍びない。「記者会見で当てられなかった」と文句を言うよりも、より深くジャニーズ問題を調査し記事にすることのほうが重要である。

「モリ・カケ」の時から顕著であるが、事実が何なのか徹底的に調査をせず、関与も何もない安倍総理夫妻への追及を続けたメディアは、もうジャーナリズムとは言えない。事実が何なのかを明らかにし、国民に伝えることがジャーナリズムである。

今回のジャニーズ事務所会見でのメディアの体たらくに、国民の失望はより一層広がっている。

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和田政宗

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