令和5年秋の有隣荘特別公開「家族のかたち」〜 家族のための建物で、家族の存在を考えてみよう

倉敷が誇る文化施設である大原美術館。

その真正面に、緑色の瓦屋根が特徴的な建物があります。

建物の名前は「有隣荘(ゆうりんそう)」。

普段は非公開となっていますが、例年春と秋に特別公開されています。

2023年秋の有隣荘特別公開のタイトルは「家族のかたち」。

足を運んでみました。

有隣荘内は通常、撮影禁止です。今回は特別に撮影許可をいただいています。

「有隣荘」とは

有隣荘は、1928年(昭和3年)に完成した「大原家の旧別邸」です。

本宅は現在の「語らい座 大原本邸」で、当時から歴史的にも由緒ある建物でしたが、どこからでも出入りでき、家族だけの生活空間を持ちづらい状況だったそうです。

そこで、大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)は壽恵子(すえこ)夫人を気づかい、家族だけの生活ができる住まいとして、「洋式住宅」の建築を依頼します

そして、当初の家庭的な洋式住宅から、当時倉敷にはなかった「迎賓館」としての機能が設けられた結果、広い洋間の娯楽室と大規模な日本建築様式を併せ持つ「本格的な邸宅」へ大きく変わりました。

これが現在の有隣荘です。

令和5年秋の有隣荘特別公開「家族のかたち」

写真提供:大原美術館

令和5年秋の有隣荘の特別公開は、「家族のかたち」と題し、大原美術館の所蔵作品のなかから家族を題材にした作品を選び、展示しています。

有隣荘は元々家族のために建設された建物です。

  • 母子
  • 生と死

という3つのテーマが、有隣荘内の洋室・和室に表現されています。

2019年(平成31年)以降の特別公開については、以下にまとめています。

タップすると表示します

2020年春(令和2年)から2022年春(令和4年)までは、新型コロナウイルス感染症の影響で特別公開は中止となりました。

展示作品

展示作品は以下のとおりです。

全期間展示

  • オーギュスト・ロダン《ロダン夫人》
  • ベルナール・ビュッフェ《アナベルの像》
  • 岸田劉生《画家の妻》
  • 坂本繁二郎《髪洗い》
  • アメデオ・モディリアーニ《ジャンヌ・エビュテルヌの肖像》
  • ジョルジュ・デスパニャ《幼児のはなをかむ若き母》
  • カレル・アペル《母と子》
  • エジプト、ディル・エル=メディーナ《トト神へのステレ》
  • 熊谷守一《陽の死んだ日》

10月6日~13日展示

  • 棟方志功《大原壽惠子歌集抄板画柵》より〈立つ子の柵〉
  • 太田三郎《Nの家族》

10月14日~22日展示

  • ヘンリー・ラム《浴み》
  • 棟方志功《大原壽惠子歌集抄板画柵》より〈一人想ふの柵〉

なお、「アメデオ・モディリアーニ《ジャンヌ・エビュテルヌの肖像》」は、有隣荘特別公開での展示後、海外に長期間貸し出されることが決まっているそうです。

アメデオ・モディリアーニ《ジャンヌ・エビュテルヌの肖像》

大原美術館ではしばらく鑑賞できなくなるため、好きなかたはこの機会にぜひ足を運んでみてください。

会場のようす

それでは、会場のようすを写真中心に簡単に紹介します。

有隣荘外観
1階洋間は「芸術家たちが見つめた妻の姿」がテーマ
オーギュスト・ロダン 《ロダン夫人》と岸田劉生《画家の妻》
1階和室は「母と子のつながり」がテーマ
アメデオ・モディリアーニ《ジャンヌ・エビュテルヌの肖像》
2階和室は「家族の生きた証」がテーマ
エジプト、ディル・エル=メディーナ 《トト神へのステレ》

おわりに

企画を担当した大原美術館 学芸員の長谷川祐里(はせがわ ゆり)さんは、以下のように語っていました。

長谷川さんの解説

有隣荘という建物は、元々は大原家の当主であった大原孫三郎が建てた別邸です。

孫三郎の妻 壽恵子(すえこ)が病弱であったため、本宅だけでなく、家族だけでゆっくり過ごせる場所が欲しいということで、建てられました。

そういった「家族への想い」に寄って建てられた空間の中で、さまざまなかたが表現する「家族の作品」を楽しんでいただきたいと思います。

まずはどういった作品かなというのは見たまま楽しんでいただければと思いますし、どういう画家・作家が、どういう想いで表現したのか、また見られるかたご自身にとって家族ってどういう存在なのか。

そういうことを一緒に考えながら、見ていただければと思います。

令和5年秋の有隣荘特別展示は「2023年10月6日(金)から10月22日(日)」まで開催されています。

作品を鑑賞しながら、大原孫三郎が家族のために建設した建物にも注目してみてください。

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