本当の地獄は「収束後」だった!企業倒産がコロナ禍前の水準に

(写真はイメージ)

2023年度上半期(4−9月)の倒産社数が4年ぶりに4000社を超え、コロナ禍前の水準に戻ったことが帝国データバンクの調査で分かった。経済に深刻打撃を与えた「コロナ禍」だが、企業倒産数ではポストコロナの方が過酷であることが浮き彫りになった。

「ゼロゼロ融資」倒産は全体の7.7%

同調査によると、上半期に全国で1000万円以上の負債を抱えて法的整理により倒産した企業数は4208社だった。2022年上半期との比較では34.7%(1085社)増と大幅に拡大した。2023年7月から始まったコロナ支援の実質無担保・無利息融資(ゼロゼロ融資)の返済に耐えきれず倒産した中小企業が増えたためという。

この「ゼロゼロ融資」は実施前の段階から、外部環境の変化に対応できないゾンビ企業を増やすだけとの懸念もあった。返済期間に入ってからの倒産急増は、こうした懸念が的中したとも言える。だが、同調査によると「ゼロゼロ融資」の返済不能による倒産は324社、全体の7.7%に過ぎない。

最近の物価高や人件費上昇というポストコロナの経済要因もあり、「ゼロゼロ融資」が政策的な間違いだったとは言えないとの指摘もある。今後も円安によるエネルギーや原材料などの物価高や人手不足による人件費高騰は続く見通し。


大量倒産を回避するには「事業承継」しかない

さらに金利も上昇傾向にあり、資金繰りもますます苦しくなるだろう。コロナ禍を生き残った健全企業も、経営環境は急速に悪化している。そうなるとコロナ前の水準を大きく上回る「大量倒産時代」がやって来る可能性も否定できない。とりわけ中小企業においては、倒産回避のために残された時間は短い。

幸いにして従来は大企業が対象だったM&Aが、第三者への事業承継という形で中小企業にも間口が広がってきた。政府も事業承継・引継ぎ補助金や非上場の株式などの承継に伴う贈与税の負担を実質ゼロとする事業承継税制などを相次いで打ち出し、事業承継を後押ししている。

これは中小企業の倒産や廃業が国内産業のサプライチェーンの寸断を招き、日本経済のマイナス要因になるとの危惧からだ。外部環境が厳しくなるのは避けられない以上、経営が立ち行かなくなる前に第三者への事業承継という形での生き残りを図り、倒産を回避するのが企業にとっても社会にとっても「最善の選択」と言えそうだ。

文:M&A Online

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