岩井俊二監督「『この子しかいない』すごい才能の持ち主。心のなかは大はしゃぎだった」アイナ・ジ・エンドを絶賛!『キリエのうた』公開記念舞台挨拶

岩井俊二監督最新作にして、アイナ・ジ・エンド、松村北斗、黒木華、広瀬すずが出演する音楽映画『キリエのうた』が、10月13日より公開中。それを記念して、10月14日に新宿バルト9にて公開記念舞台挨拶が行われ、アイナ・ジ・エンド、松村北斗、広瀬すず、岩井俊二監督が登壇し、さらに、本作でストリートミュージシャンの松坂珈琲役を務めた笠原秀幸がMCが務めた。

映画鑑賞後の観客による盛大な拍手に包まれながら登壇したキャスト陣と岩井監督。本作で映画初主演となったアイナは、キリエをイメージした青いドレスを身に纏って登場し「今日はお越しいただきありがとうございます。2022年、すずちゃんとクランクインして1年半が経ち、ようやく皆様に会えて感慨深いです」と挨拶。松村は「単純な物語ではないからこそ、いろんな届き方をするんだろうなと思います。素敵な気持ちで作った映画なので、素敵な届き方になったらといいなと願っています。ネタバレとか一切気にせず、のびのびと楽しい時間にできたら!」と意気込みを見せた。広瀬は「昨日公開して、今日もたくさんの方に足を運んでいただけて嬉しく思います。本日はよろしくお願いいたします!」と続けた。そして岩井監督は「本日はお越しいただきありがとうございます。振り返れば2年前の今ごろ物語を書いているところでした。時が流れてようやく僕の手を離れたのが感慨深いです。作品というのは、皆さんが見てくださって初めて成就するものだと思っています。3時間かけて皆さん一人一人の心の中に、ダウンロードしていただき、持ち帰っていただければと思います」と無事初日を迎えられた感想を明かし、軽快なMC笠原の進行のもと、舞台挨拶がスタートした。

無事に初日を迎え、アイナは一人で劇場に見に行った際のエピソードを明かし「パンフレット売り場で、お兄さんが『このシーン良かったな』と呟いているのを見て、ここにいるよ!と心の中でアピールしました。見てくれた人の感想をようやくもらえることが本当に嬉しいです!」とコメント。本作を見た人の感想を聞いて松村は「13年間を描いて、たくさんのキャラクターが登場するからこそ、見た人それぞれに違う感想のグラフが生まれているなと思う」と、観た後に、誰かと語りたくなる映画だと解説。撮影当初のことを振り返り、クランクインが雪の中だったという広瀬は「雪の中、真横で聴いていたキリエの歌声が世界中に届き始めているのが、本当に嬉しい。魂の叫びが皆さんに届いているのが、本当にすごいものだと思います」と自身の気持ちを話した。

さらに、釜山国際映画祭にてレッドカーペッドを歩いたのが記憶に新しいアイナは、監督のモテモテエピソードを暴露。「海外の俳優から、写真撮ってください!と言われたり、プリンセスみたいな女優さんとお話しされているのを見て、すごい人気だなと思いました。岩井さんに連れてきてもらえて、本当にありがたい」と岩井監督がファン・ビンビンと写真を撮っていたエピソードを披露。海外での反応を受けて、松村、広瀬は“歌の力”が最も印象的だったようで、松村「歌の説得力がすごかった」、広瀬「映画愛に溢れている方が多くて、歌が国境を超えて繋がっていた。忘れられない景色になった」と海外の映画祭での反応を振り返った。

そんな中、笠原は本作での自身の歌唱シーンの秘話を明かす。実は撮影の4日前に、岩井監督から「歌ってみて」と言われたとのことで、「本編ではほとんど使われないと思っていたら、しっかり映されていて、劇場で見たときは恥ずかしくて薄目で見てました」と恥ずかしながらも嬉しそうな顔で裏話を明かし、キャスト陣も驚きとともに温かな笑いに包まれた。

本作を見た人に届けたい思いとして、アイナは「みんなの居場所になりたい。癒してあげたい」とコメント。「5時まで仕事頑張ってビールを飲むか。『キリエのうた』か?と迷うくらい“キリエが待ってるよ!“と思ってます」と映画に込めた想いを明かした。

続けて、印象に残ったシーンについて聞かれると、松村は「こんなに腰曲がってたっけ!?」と驚きの思いを語る。笠原はそのシーンで靴紐を触る夏彦の行動に対し「最高だった!」とコメントすると、広瀬も大共感。混乱しすぎた時に、なぜか意味深な行動をしてしまう人間の心理が現れていたと絶賛。広瀬は「脆くて儚い、夏彦の切なさと優しさを感じるシーンだった」と熱く語った。アイナはそのシーンの撮影が何十回も撮り直していた裏話を明かし、松村は「昼から夜まで景色が変われば変わるほど、今の方がいい!となって何度も撮り直し、最高のシーンにしていました」と撮影時を振り返った。

最後に、今まで共に歩んできたキャスト陣へ、監督がそれぞれへ想いを告白。『ラストレター』にも出演していた広瀬には「仮面を被ったような役柄で、ややこしいシーンを行ったり来たりしながら頑張ってもらいました。大変な撮影にも関わらず、独創的なインスピレーションで役を見事に作り上げてもらいました。本当にありがとうございました」と広瀬の圧巻の演技力を賞賛した。松村には「震災の翌年に書き綴った短編小説があって、最後の1ページがどうしても書けず未完のままでした。それを今回、『キリエのうた』のなかに持ち込めるんじゃないかと思って持ち込んだのが、夏彦です。ただ一色の役ではないというか、いろんな心模様が変遷しながら、いろんな状況に追い込まれて進んでいく役で。毎日順番に撮影していくわけではありませんでしたが、その時その時の瞬間を的確に演じてくれた姿を見て、まさにこの役は松村北斗が作り上げた潮見夏彦だと思っています」と語り、真剣な眼差しで見つめて監督の言葉を受け止める松村の姿は、来場者の心も震わせた。

そして最後に、映画初主演を務めたアイナへは「アイナさんは、初めて歌っている姿を見て、『この子しかいない』と思って。その頃、まだ名前も存じ上げてなかったところからのスタートでした。それからアイナ・ジ・エンドという名前とBiSHというグループを知り、ご自身で作詞作曲もして、BiSHの振り付けもやっているという、すごい才能の持ち主だなと思いました。現代の才気溢れるアーティストといっしょに仕事をできるということで、単純に心のなかは大はしゃぎでした。演技をするのが初めてだという女の子に、本当に大変なものを背負わせちゃったなと心のなかでヒヤヒヤしていましたが、みなさんがご覧になった通りのキリエと路花が誕生したと思います。まさに音楽とキリエと路花はアイナ・ジ・エンドが作った純度100%の作品だったと思います。ありがとうございました」と伝え、正面から監督の言葉を聞いたアイナは感涙した。

イベント終盤では、劇中にも登場した“キリエカラー”の青いバラの花束を、監督からアイナ・松村・広瀬にサプライズで贈呈。松村は「キリエブルーの花束だ!ラストシーンの花束みたい!」と大喜び。アイナ・広瀬も満面の笑みで監督から花束を受け取り、素敵なサプライズは大成功となった。

最後にアイナが「岩井さんからお言葉をいただけたりして、今、すごく心の棘がなくなっています。映画を観てくれた“あなた”一人一人が心の棘を抱えて生きていると思います。それは、私も一緒です。この映画を観て、みんな一生懸命生きているんだなって、明日も寝て起きてゴミ捨ててご飯食べて、同じかもしれないけど、明日も生きてみようかなって思ってもらえたら嬉しいです。無理して上を向かなくていいと思うんですけど、暗がりばかり見なくていいんだって思ってもらえたらいいなと思っています」と声を振るわせながら締めくくり、キャスト・観客の温かい拍手に包まれながら、舞台挨拶は幕を閉じた。

『キリエのうた』
2023年10月13日(金)より、全国公開
監督・原作・脚本:岩井俊二
出演:アイナ・ジ・エンド 松村北斗 黒木華 広瀬すず 村上虹郎 松浦祐也 笠原秀幸 粗品(霜降り明星) ⽮⼭花 七尾旅⼈ ロバート キャンベル ⼤塚愛 安藤裕⼦ 鈴⽊慶⼀ ⽔越けいこ 江⼝洋介 吉瀬美智⼦ 樋⼝真嗣 奥菜恵 浅⽥美代⼦ ⽯井⻯也 豊原功補 松本まりか 北村有起哉
配給:東映

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