熊本市・避難所ようやく弁当に

栄養バランス確保へ

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初めて提供された弁当を食べる避難者の女性。これまでパンやおにぎり、缶詰が中心だった=26日夕、熊本市中央区の避難所

 熊本地震から1カ月以上たっても、熊本市の避難所ではパンやおにぎりなど地震直後と変わらないような食事が提供されてきた。26日の夕食からようやく一部を除いて弁当の配布が始まり、避難者からは歓迎の声が聞かれた。

 「食事の支援はありがたいが、栄養面が心配」。拠点避難所の市総合体育館で過ごす東区の枝尾明治さん(63)は長引く避難生活への不安を口にした。

 同避難所では決まった時間に1日3食が配られる。主食はおにぎりやパン、カップ麺が中心。おかずに魚の缶詰などが添えられ、朝食に野菜ジュースが出ることも。病院で血糖値が高いと診断された枝尾さんは、コンビニでサラダを購入し栄養が偏らないよう自衛してきたという。

 24日午後7時現在、71の避難所に2448人が身を寄せる熊本市。食事については、これまで各避難所から前日上がってきた配送依頼に基づいて、おにぎりやパン、支援物資の中から缶詰やカップ麺、アルファ米などを届けてきた。  災害救助法では、避難者の食費は国などが負担。食事の提供は知事の責任で行うが、熊本地震では事務委譲を受けた熊本市も提供している。

 避難所生活が長引く場合、国は食事メニューの多様化や適温食の提供、栄養バランスの確保などを求めている。対応の遅れについて熊本市は「多くの避難者の弁当を作れる業者の選定をはじめ、食中毒などの安全性の協議や配送システムの構築に時間がかかった」と説明する。一方、県健康福祉政策課によると、同市を除く他の自治体では既に一部を弁当に切り替え、管理栄養士による栄養状態のチェックも実施している。

 熊本市が26日の夕食に用意した弁当は2千食。中央区の大江公民館に避難している吉田清さん(80)は「パンやおにぎりが中心だったので、漬物やしょうゆの味が恋しかった。栄養の偏りも気になっていたので満足しました」。別の会社員の女性(48)も「これまでと比べるとすごく豪華になった」と喜んだ。弁当は必要な数を避難所ごとに調べ、民間の委託業者が配送する。管理栄養士の巡回も実施するという。

 災害救助法で食費は1人当たり1日1110円以内と決まっているが、特別基準を設定して上乗せできる。県は熊本市を含む各市町村の配給実績を踏まえながら、特別基準の設定について国と協議する予定。1日数百円の上乗せを視野に、食事の質をさらに改善したい考えだ。

 東日本大震災の際、避難所の運営にかかわった天野和彦・福島大特任准教授は「弁当なら何でもいいわけではなく、栄養やカロリーを管理栄養士がチェックすることが大事」と助言。「福島では学校の調理室などを使って被災者が自炊できる環境を整えた。行政による“管理”ではなく、被災者の“自活”を目指した方が日常生活にスムーズに移行できる」と指摘する。(馬場正広、植木泰士、西國祥太)