公立大学の授業料無償化。人気集中で偏差値が上がる?周辺大学への影響は?

2024年度から公立大学授業料の完全無償化の動きが活発になっています。全額免除の対象拡大をした東京都(東京都立大学)、年収制限を撤廃した大阪府(大阪公立大学)と兵庫県(兵庫県立大学、芸術文化観光専門職大学)。この流れは、周辺県に波及していくのか?それとも国がまとめて支援するという方向も出てくるのか?世界を見れば、授業料無償としている国もありますので今後検討される可能性もありますが、ここでは、東京都立大学、大阪公立大学、兵庫県立大学の授業料が無償化されたことによる、周辺大学への影響について考えてみたいと思います。

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授業料全額免除は、2020年度から年収制限がある中ではじまり、2024年度から対象拡大または年収制限の完全撤廃に

2020年度より高等教育の修学支援新制度で、ほとんどの国公私立大学を対象として年収制限がある中でスタートし、それにあわせて都道府県により独自の支援を加えています。独自支援にかかる費用は莫大なもので、大阪公立大学完全無償化における財政負担額は約45億円(制度完成時)、兵庫県立の大学完全無償化における財政負担額は約22.4億円(制度完成時)と発表されており、どの都道府県でもすぐに負担できるような額ではないと考えられます。

東京都・大阪府・兵庫県は、2024年度より独自支援の対象拡大や年収制限の撤廃を決定していますが、この中でも影響が大きいと感じるのは、在学年限が長い理系学部希望者・法科大学院進学希望者に対する支援です。理系学部の場合、大学院進学率が高いため、6年間在籍となります。法科大学院進学希望者も同様です。6年間の入学金や授業料が無料になるとすると、年収が高い家庭においても、注目度は高くなります。

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大阪公立大学は、法科大学院まで授業料を支援。学部4年+法科大学院(既修者)2年で、入学金を含めると支援額合計は431万5200円。法科大学院も人気になるか

東京都立大学と大阪公立大学には、法科大学院が設置されており、これも支援対象となっています。法科大学院の入学定員は小さいため、全体に与える影響は小さいのですが、希望者にとっては大きなメリットとなります。特に、法学既修者における司法試験合格率が全国平均に近い数値になっている大阪公立大学法科大学院(旧 大阪市立大学法科大学院)は人気になることも考えられます。

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兵庫県立大学は、博士後期課程まで授業料を支援。学部4年+博士課程5年で、入学金を含めると支援額合計は538万6200円。学部だけでなく、大学院も人気になりそう

東京都立大学、大阪府立大学は、修士や博士前期課程(法科大学院含む)の入学金と授業料の支援としているが、兵庫県立大学は、博士後期課程まで支援するとしています。9年間で考えると500万円を超える金額となります。大学院への進学率は、兵庫県立大学工学部で61.1%(2022年度学部卒)、理学部で76.0%(2022年度学部卒)となっています。博士課程後期の入学定員は78名と小さいのですが、兵庫の人材育成や産業の成長力強化の目的もあるということで、東京都や大阪府とは少し異なる点も見られます。大学院進学に関しては、東京都立大学や大阪公立大学も含めて、私立大学に通う理工系学部の学生も、大学院受験を考える学生が増えそうです。

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志願者は増え、地元占有率が高くなり、偏差値も上がる可能性も。同等ランクから少し上位ランクの大学に影響があると考えられる

入学金に加え、授業料も無償となれば、対象となる地元の受験者が増えることは確実だと思います。確実に合格したい安全層の受験が増えることで、偏差値も若干上がる可能性も考えられます。影響の範囲は、同等ランクから少し上位ランクの大学で、兵庫県立大学においては、広島大学や岡山大学のように、少し上位ランクで自宅外通学になる大学は、兵庫県内からの入学者が減少するのではないかと予測されます。併願する私立大学については、無償化により国公立を目指す人が増えれば、特に関西地区においては、志願者が増えるかもしれません。

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周辺県への波及も考えられるが、目的は県内残留・地元産業活性化となる

授業料支援の目的は、「学費が払えないから大学進学をあきらめる生徒をなくすため支援」であり、「子育て世帯の教育費負担を軽減するための支援」でもあり、兵庫県については、「地元の人材育成や産業の成長力強化」も加わっています。特に地方にある県は、今でも大学生のUターンやIターンに支援をしていますが、地元を活性化するため、県内残留率を上げるために授業料支援を加えることも考えられます。ただ、日本全国の公立大学が無償化されてしまうと、学生にとっても面白みがなくなる感じもします。また、今回の東京都・大阪府・兵庫県の公立大学無償化の動きは、対象となる大学が少なく、入学定員が増えるわけでもないため、全体で見れば影響範囲はかなり限定的になるはずです。しかし、2024年度入試の動向次第で、大きな動きになる可能性もあり今後も注目されます。

(参考)前期日程2次試験 偏差値

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