トヨタが認めた太陽電池 エネコートテクノロジーズ <京都大>-大学発ベンチャーの「起源」(87)

エネコートテクノロジーズのペロブスカイト太陽電池(同社ホームページより)

エネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)は京都大学発の太陽電池開発ベンチャー。2018年1月に同社共同設立者で最高科学責任者でもある若宮淳志京大化学研究所教授の研究成果をベースに、次世代太陽電池の本命といわれる「ペロブスカイト太陽電池」の開発に取り組んでいる。

「曲がる」「貼れる」「高効率」の太陽電池を実用化

ペロブスカイト太陽電池は、文字通り「ペロブスカイト構造」と呼ばれる結晶構造を持つ化合物を用いた次世代の太陽電池で、2009年に日本で発明された新しい技術だ。黒くて薄いペロブスカイト層を、プラスの電荷を取り出す「p型半導体層」、マイナスの電荷(電子)を取り出す「n型半導体層」ではさむだけというシンプルな構造が特徴。

現行の結晶シリコン型太陽電池の発電効率は20%台半ばだが、薄型になると大幅に低下する。そのため高出力の太陽電池は定置型にならざるを得ない。だが、ペロブスカイト太陽電池は、次世代太陽電池の中でも最も高い25.7%の発電効率を見込める。同社が手がける極薄のフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、現時点で19.4%の発電効率を実現している。

薄くて軽く、曲げることができる特性からどこにでも設置でき、工程が少ないため低コスト生産が可能といったメリットがあるという。こうした特性に注目したトヨタ自動車は2023年6月、電気自動車(EV)の屋根に搭載する車載用太陽電池の研究を、エネコートテクノロジーズと共同で実施すると発表した。

車載用としては日陰や曇り、雨といった中照度下で、結晶シリコン型太陽電池よりも高い発電効率を実現できるのも魅力だ。

全天候での変換効率の高さや自由な形状と柔軟性、軽量といった利点から、建物の壁や線路脇など既存の太陽光パネルを設置しにくい場所に設置可能な特性がある。立地制約を克服できるため、太陽光発電の総発電量を増やすことが期待されている。

10月17日に三井不動産レジデンシャルと、住宅におけるペロブスカイト太陽電池の活用に関する共同研究を始めると発表。エネコートテクノロジーズ社製のペロブスカイト太陽電池を三井不動産レジデンシャルのマンションに設置し、実証実験を開始する。

製造技術も同社の強み。髪の毛の100分の1程度に相当する600ナノメートル以下の厚みで、平坦で緻密なペロブスカイト層を形成する技術を確立しているという。KDDIから出資を受けるなど、日本を代表する大企業とのコラボレーションを次々と実現している注目の次世代エネルギースタートアップだ。

文:M&A Online

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