カスミ DX化「生みの苦しみ」 下期、質的転換実現へ

カスミはDX推進で生みの苦しみに直面している。同社の24年2月期上期決算(単体)は営業収益3.8%減、営業利益98.1%減と苦戦。

U.S.M.Hのマルエツ(営業収益3.0%増、営業利益123.7%増)、マックスバリュ関東(営業収益5.1%増)が増益を確保するなか、カスミの業績低迷が足を引っ張った。

大幅減益の要因は、DX化推進のための先行投資と、期中に実施した販促手法の変更だ。同社は6月からのScan&Goカード導入に伴い、ignicaセルフレジの全店導入やカード利用プラットフォームとして3年分の先行投資を上期に実施。

販促手法の変更では、これまでの曜日セールやクーポン配布を終了。7月からポイント付与の販促手法に切り替えたものの、来店回数が減少。7月の既存店客数は前年比10%減と大きく落ち込み、売上・利益の減少につながった。

山本慎一郎社長は「周知浸透の遅れがあった」と振り返る。新聞でのチラシ配布と週2回の店頭クーポン配布をやめ、まだ保有率が低かったカードでの販促に変更したことが、割引サービスの切り下げと捉えられて客の離反をもたらした。

しかし7月以降カードホルダーの増加に注力した結果、保有率が順調に上昇し、発行枚数90万枚を突破。100万枚も視野に収めた。8月以降は客数も回復傾向にあり、「営業収益をはじめ、想定していた水準に近づいている」(藤田元宏U.S.M.H社長)。

販促手法の切換により、最大2倍にまで開いていた曜日波動が平準化され、クーポン配布日への来客集中が解消。物流への悪影響を抑えられたほか、U.S.M.Hが自社開発したignicaセルフレジの全店導入を前倒しした効果もあり、人時生産性が向上した。今後はアプリ顧客を皮切りに、ポイントプログラムを利用した価格訴求を進める。

下期は、値引き前提で他社よりも高くなっていた価格を見直し、相対的な低価格の実現を目指す。

また、売上前年超えの「BLANDE」など、差別化につながる価値訴求も強化する方針だ。

U.S.M.Hでは中期計画でScan&Goアプリを活用したオンラインデリバリーやeコマースなどOMOの強化を掲げている。カスミの店舗DXはその先行事例という重要な位置付け。9月には最新鋭のマテハン設備を導入したカスミ、マルエツの共同物流センターも稼働を開始した。カスミのDX推進の取り組みは業界からも注目されている。

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