「アディダスの本気度」はいかほどか!? 秋冬ウェアの2トップ試着体験ルポ

アディダスゴルフの新作コレクションを実体験

アディダスゴルフの2023年秋冬アパレルコレクション「アルティメット365(以下、U365)」のローンチイベントが北海道苫小牧市のニドムリゾートで行われた。これまでにアディダスゴルフシューズのイベントは何度も行われていたが、アパレルではアディダスゴルフとしても初めての試み。

フットウェアの雄は、シューズだけでなくアパレル部門でもギアを一段上げて本気で商戦に乗り込む意気込みのようだ。肝心のプロダクトはどんなものか、最新の秋冬コレクションを体験すべく、北海道へ飛んだ。(編集部・柴田雄平)

“本気度”はいかほど?「U365」を実体験レポート

ファブリックミックスジャケットとキルトコンビネーションジョガーパンツ

今回のアディダスの秋冬コレクションは2つのカテゴリーで展開する。その一つが初秋から冬にかけての気温帯(約10~20度)向けに作られた「COLD.RDY(コールドレディ)」だ。

イベント当日、苫小牧市の気温は13度。10月初旬、北国の朝はしっかり寒く、季節は一気に進んでいた。筆者は自前の半袖インナーとモックネックの上に、その新作の「コールドレディ」を着用してプレーした。

当日の練習場の様子

コールドレディは「呼吸する断熱ウェア」という触れ込みで、体から放出される熱気を外へ逃がさない「保温性能」と、発汗時に水分を吸収して外へ放出する「除湿性能」を兼ね備えている。まさにその機能性通りなのか、クラブハウスを出た瞬間は肌寒く感じたが、練習場で何球か球を打つとすぐに温まり、ポカポカのまま快適にラウンドできた。

ハーフターン時には気温は19度まで上がり、軽く汗ばむほど。通常は汗でウェアが肌に貼りつくのを嫌って一枚脱いだりするところだが、除湿機能のおかげか不思議とそういった不快感はなく、汗冷えすることもなかった。

トップでもフィニッシュでも突っ張る感じは一切なし

一方で、保温性能を担保しつつ、スイングに求められる「薄さ」を兼ね備えているのはうれしい。数ホール回って感じたのは、何より振りやすいこと。ジャケットはすべて同じ生地のように見えるが、ボディ部の正面側だけがウェットスーツのような素材感で厚くなっている。背中側と肩から腕にかけては、やや薄くストレッチ性に長ける生地で作られていた。スイングの動きに合わせての仕様だと思われるが、トップやフィニッシュ、グリーンでかがんだ時に突っ張る感じが全くないのは驚きだった。

もう一つのカテゴリーは、気温10度を下回る冬のゴルフ向けの「FROSTGUARD(フロストガード)」だ。この日はそこまで気温が低くなかったため、ラウンドでは着用しなかったが、メインの製品となるダウンジャケットを着用し何度かスイングさせてもらった。高い保温性能を保ちながら、ゴルフをする上で申し分のない薄さと軽さ、そしてストレッチ性能を両立していることに驚いた。全く“モコモコ”していないのに温かくて動きやすい、この冬重宝しそうな一枚だ。

シックなカラー展開

通常のダウンジャケットは中綿が外に出るのを防ぐため、素材自体を丈夫にしたり生地に様々な加工をしたりして耐久性を持たせる。しかし、そのせいで厚みが出て重量が増したり、ストレッチ性能が低下したりという難点があった。今回のプロダクトでは高品質の素材を使用し、ステッチではなく圧着するなどの技術を駆使し「振れる断熱ウェア」を実現しているという。

「アパレルへの本気度」を開発責任者にも直撃インタビュー

これまでのアディダスゴルフのアパレルと言えば、個人的にはシューズほど“攻めた”印象はなく、シンプルかつスポーティで、どちらかというと保守的な印象だった。一方で、23年春夏モデルとして展開された「アディクロス」のような、街でも着られそうなカジュアルなウェアも世に送り出している。いったいアディダスのゴルフアパレルはどこに向かうのか―。アディダスゴルフAPACブランドディレクターの松養栄峰(まつがい・しげたか)氏に話を聞いた。

コレクションをプレゼンするアディダスゴルフの松養氏

―「コールドレディ」を着てプレーしましたが、「アディクロス」とはまた違った、かなりアスリート向けの印象を受けました。その狙いは?

アディダスゴルフの製品はシューズも含め、「革新的でベストなプロダクトをゴルファーに訴求する“スポーツクレディビリティ”」と「ゴルフゲームやその周辺のカルチャーを推進する“カルチャークレディビリティ”」という二軸で展開しています。これは製品の開発段階、またマーケティング活動をする上でも常に意識していることで、今回の製品はスポーツ寄りの前者に当たります。

いまゴルファーの裾野はとても広がっていると思います。ですから、カルチャーの側面を我々はカバーしていかなくてはならないと思っています。ですがその一方で我々はスポーツブランドであり、パフォーマンスブランドでもあるので、アスリートなど本格志向のゴルファーのパフォーマンスをサポートし、支持していただけるようなモノ作りというのは常に心がけています。

―「フロストガード」のダウンは薄くて軽いのに、保温性能がとても高くて驚きました。とことん機能性を重視しているように感じましたが?

最高峰の素材を使用していることもあり、どうしても機能面が前に出がちです。ですが、「U365」自体は機能性だけではなく、シルエットや新しいスタイリングの提案をしていて、我々の掲げる「世界で最も“攻めた(プログレッシブな)”ゴルフブランドになる」というミッションを体現しているコレクションだと思っています。

「コールドレディ」はビビッドなカラーもラインアップ

―機能性を追求するとデザインが二の次になってしまうこともあると思うのですが、デザインと機能性の折り合いについてはどのようにお考えでしょうか?

アディダスにはアディダスらしさ、スポーツブランド、パフォーマンスブランドというポリシーがあり、素材のチョイスも含め、ゴルフの動きに特化した「機能美」といった部分もデザインの一部だと考えています。ロゴを加工するとか、グラフィックで柄を作るとか、そういった意味だけのデザインだけではない。そこは自社で開発している我々の強みだと思います。

―ここ数年でゴルフシューズのシェアがだいぶ上がっていると思いますが、ゴルフアパレルでもナンバーワンを目指すのでしょうか?

フットウェアにおける日本でのマーケットシェアはおかげさまでナンバーワンになりました。2019年以前は、アディダスが一番になるなんて誰も想像できなかったと思います。それが、20年に「コードカオス」をローンチして潮目が変わりました。巨大な牙城が存在する中でナンバーワンになれた事実は、我々にとって大きな自信になっています。

アパレルに関してですが、この3年はコロナの影響もあってなかなか土台を整えるのが難しい状況もありました。ですが、渋野日向子選手とも契約(フットウェア・アパレル)できましたし、今は安定的にシェアも上昇傾向にありますので、今回のローンチイベントを皮切りにアパレルでもナンバーワンを目指したいと考えています。

スポーティなレディスモデルも展開

―ちなみに、アディダスのアパレルは業界でいま何位なのでしょうか?

様々なデータが存在しますので一概には言えませんが、我々としては3番手に位置していると見ています。ただ、他のブランドと同じもの作りをしているつもりも、するつもりもありません。

ゴルフウェアはファッションと機能性の両方を求められますが、我々はパフォーマンスブランドとしての強みを持っていると思います。我々は我々のスタイルで、独自のデザインと素材で“攻めた(プログレッシブな)” もの作りをしていくことを忘れてはいけないと思います。

―ゴルフアパレルに込める思いなどありますでしょうか?

社内のグローバルミーティングなどでは「コンフィデンス」という言葉をよく使います。直訳すると「自信」や「信頼」という意味でフワっとしているんですけど…。私は月例競技に出るアマチュアゴルファーですが、アディダスのウェアを着ることで、朝一のティイングエリアで「きょう一日がんばろう」と思えます。実際、それぐらいの小さなコンフィデンスでもいいんです。それがアスリートレベルになれば「この試合で絶対に勝つ」といった大きなコンフィデンスを感じさせるウェアにも昇華する。我々はそんなウェアをつくっていきたいと思っています。

◇◇◇

唐突に投げかけた質問に対しても、自信を持った口調で応えてくれた松養氏。開発の経緯や背景、そしてアディダスの思いを知ると、シンプルで保守的に見えていたデザインも、機能性をとことん追求した結果の必然であり、逆に自身がそのウェアを着るのに相応しいゴルファーか自問してしまう。ゴルフをスポーツとして真剣に考え、とことんパフォーマンスにこだわって作られた“本物志向”のウェア。ゴルフに真摯に取り組む向上心が強いゴルファーほど、「U365」の機能美を試してもらいたい。

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