牛伝染性リンパ腫ウイルス感染による消化管細菌叢の変化、麻布大学などが発見

麻布大学、岡山大学、宮崎大学の研究グループは、牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)感染により牛の消化管細菌叢が変化することを見出した。BLVによる被害の全容解明に役立つことが期待される。

BLVは、感染後すぐにはリンパ腫を発症せず、発症後も全体の数%と非常に低いため、これまで大きな問題として取り上げられなかった。しかし、BLVの国内の感染率は30~40%と非常に高く、牛乳の生産量や繁殖成績の低下、健康状態の悪化などが指摘されていたが、BLVによる牛の生産性低下のメカニズムは不明だった。

研究グループは、近年注目されている細菌叢と血液中の栄養成分(揮発性脂肪酸;VFA)に着目し、BLV感染による細菌叢や栄養状態の変化を調べた。

研究では、国内の農場で飼われている42頭の乳用牛を対象に、血液中の栄養成分、第一胃(ルーメン)と腸内の細菌叢の解析を実施。その結果、非感染群とBLV感染群の間には血液中の栄養成分の差がなかった。また、ルーメンの細菌叢では主要な差は認めなかった。

しかし、腸内細菌叢ではBLV感染牛で微少な変化が認められた。次に、細菌種間の関連性の分析(共起ネットワーク分析)を行った。その結果、BLV感染群のルーメンおよび腸内では長期かつ僅少な細菌叢のバランスの崩れを認めた。

この変化は小さいが、BLV感染にすぐに症状が出ないことと一致しており、リンパ腫発症だけでなく、乳量や肉質の低下、繁殖成績の低下、健康状態の悪化など、長期的に牛の健康に影響を与えているとみている。この結果は、BLV感染して生涯無症状の牛でもBLVが牛の健康に悪影響を及ぼす可能性を示すものとしている。

論文情報:

【Annals of Microbiology】Exploratory study of volatile fatty acids and the rumen-and-gut microbiota of dairy cows in a single farm, with respect to subclinical infection with bovine leukemia virus

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