ディズニーのテレビ局に手を伸ばした「コメディアン買収王」とは

ディズニーからテレビ局の買収を狙うアレン氏(同社ホームページより)

米ディズニー傘下の米ABCテレビネットワーク買収にアレン・メディア・グループのバイロン・アレン氏が名乗りをあげた。ABCの他にCATVのFX、有料動画配信のナショナルジオグラフィックを含め、総額100億ドル(約1兆5000億円)での買収を提案している。アレン氏は1961年生まれのコメディアン。映画配給会社やテレビ局、米NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)チームなどのM&Aを次々と成功させた実業家でもある。なぜ、1人のコメディアンが「買収王」になれたのか?

スタートは番組制作会社の起業

アレン氏は14歳の時に米ロサンジェルスのコメディクラブで、アマチュアのスタンドアップコメディ(観衆との対話形式で進められるライブエンターテイメント)演者として出演。プロのスタンドアップコメディアンであるジミー・ウォーカー(1926年から1932年まで在任したニューヨーク市長とは別人)から才能を認められ、コメディ作家としての活動も始める。1979年に人気番組だった「トゥナイト・ショー」でコメディアンとしては最年少出演し、テレビデビューを果たした。

その後はコメディアンとしてだけではなく、社会派番組のレポーターや司会者としても活躍。1993年に番組制作会社のCF エンターテインメント(現エンターテイメントスタジオ)を設立する。当初は低予算で制作可能なインタビューや、実際の裁判のドラマ化や紛争当事者を番組で仲裁する法廷ショーを手がけ、複数のテレビ局に提供するビジネスを手がけていた。2011年からは映画や舞台にも進出している。

一時は業績が低迷したものの、2015年10月に低予算映画を手がける独立系映画配給会社のフリースタイル・リリーシングを、1000万ドル(約15億円)以上で買収。同社が2017年6月に配給したパニック映画の「47 Meters Down』は約500万ドル(約7億5000万円)の低予算だったにもかかわらず、全世界で6200万ドル(約93億円)の興行収入をあげるなど、ヒットを連発した。


地上波テレビ局を相次いで買収

2016年6月に米NBCニュースの一部門だったアフリカ系アメリカ人向けのウェブニュースサイトTheGrio(グリオ)を買収。2018年3月に気象情報番組を配信するウェザーチャンネルを推定3億ドル(約450億円)で買収した。2019年5月にはアレン・メディア・ブロードキャスティングを設立し、テレビ局の買収を加速すると表明。現在はグループの名称も「アレン・メディア・グループ」となっている。

同7月にインディアナ州エバンズビルのWEVV-TVとWEEV-LD、ルイジアナ州ラファイエットのバイユー・シティ・ブロードキャスティングの放送局を1億6500万ドル(約246億7500万円)で、2020年2月にハートランド・メディアの子会社であるUSAテレビジョンから11局を2億9000万ドル(約434億円)で買収した。

その後もABC系列局のKITV(ハワイ州)、Fox系列局のWCOV-TV(アラバマ州)、アフリカ系アメリカ人向けの有料ニュース配信のブラックニュース チャンネルなどを次々と買収し、「メディア買収王」としての地位を確固たるものにした。米国でもネット動画との競争で収経営が厳しい地上波テレビ局を買収するのは、同社が全米でサービスを提供するインターネットテレビ局「ローカル・ナウ」向けのコンテンツを増やすのが狙いだ。

今回はディズニー傘下のテレビネットワークの買収に着手したが、地方テレビ局を運営するネクスター・メディアも買収に向けた予備協議を進めており、買収合戦にもつれ込む可能性もある。ディズニーは動画ストリーミングサービスの普及で苦戦している地上波テレビ事業の売却を検討していた。

文:M&A Online

<p style="display: none;>

M&A Online

M&Aをもっと身近に。

これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。

© 株式会社ストライク