山口鷺流狂言保存会が定期公演 11月4日に定員500人で開催

 山口鷺流(さぎりゅう)狂言保存会(TEL083-920-4111)の定期公演が、11月4日(土)午後2時から、山口県教育会館(山口市大手町2)で開かれる。コロナ禍以来3年ぶり開催の昨年は、席の間隔を空けるために通常の半分の定員としたが、今回は例年と同じく定員500人(当日先着順)で開催する。

▲来年には結成70周年を迎える

 演目および出演者は次の通り。

 「佐渡狐」升井洋至(佐渡の百姓)、伊藤隆(越後の百姓)、森脇亮(奏者)
 「文荷」大田登志子(主)、池田幸枝(太郎冠者)、新保秀子(次郎冠者)
 「盆山」米本次郎(盗人)、土村廣隆(亭主)
 「宮城野」鈴木太龍(大名)、米本太郎(太郎冠者)、米本文明(亭主)

 各演目の前には、内容の説明もされる。さらに、当日配布されるプログラムにも解説が掲載されており、「初めて見る人にもわかりやすく、誰でも楽しめる時間にしたい」と同会。終演予定は午後4時だ。

 狂言とは、中世の庶民の日常生活を明るく描く、セリフが中心の室町時代に成立した喜劇。能と異なり、ほとんどは面をつけずに演じられ、笑いを通して人間の普遍的なおかしさを描きだしている。

 江戸時代に家元制度を取っていた狂言には、大蔵流、和泉流、鷺流の3流派があった。だが、幕府瓦解(がかい)のあおりを受けて、鷺流だけが途絶えてしまった。

 山口に現在伝わる鷺流狂言は、長州藩お抱え狂言方・春日庄作(しゅんにちしょうさく)が始祖。彼は、分家・鷺伝右衛門派に学び、江戸時代末期に活躍。明治になり厚狭郡(現宇部市)で農業に従事していたが、1886年(明治19年)、野田神社の上棟式で神事能に招かれ、狂言方として出演した。それが縁で、山口・本圀寺(道場門前)に移り、趣味として習いにきた人々に狂言を教えるように。これが、現在の山口鷺流狂言の始まりだ。そして、町の人々が相互に稽古をつける「伝習会」によって、鷺流は受け継がれていった。

 ところが、大正期には春日の直弟子もいなくなり、急速に衰退。それを憂えた有志は、1954年(昭和29年)に「山口鷺流狂言保存会」を結成した。1967年(昭和42年)には山口県指定無形文化財の第1号にも指定。来年は、保存会結成から70年の節目の年となる。

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