時津町長選 12年ぶり新リーダー誕生へ 前町議と県外出身の3候補の争い 29日投開票 長崎

 任期満了に伴う長崎県西彼時津町長選の投開票が29日に迫った。届け出順にいずれも無所属新人で、前町議会議長の山上広信氏(62)=国民推薦=、前町議の山脇博氏(61)、元兵庫県議の小西彦治氏(51)が立候補。2007年以来の選挙戦は三つどもえの争い。12年ぶりの新リーダー誕生に向け、戦いの情勢を探った。

 不動産会社経営の山上候補は1999年に町議初当選。町長選に初めて挑んだ前回2007年は当時の現職に苦杯をなめた。11年に町議復帰。議長も2度経験し、雪辱を期す。
 現職の4選不出馬を受け直後の8月に名乗りを上げた。政策面では現町政の継続を示しつつ、土地利用の規制緩和で住宅を増やし人口増を目指すなど「さらに住みよい街に」と訴える。国民県連や連合長崎の推薦を得るなど組織戦も展開。出陣式では弁士の町議から「手応えは良好」との発言も出る中、陣営は上滑りを警戒して引き締めにかかる。
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 初挑戦の山脇候補は自動車整備業を営み、町議としては山上候補の1期後輩で同じく議長経験もある。4月の町議選では2連続でのトップ当選を果たし、6月に出馬表明。虎視眈々(たんたん)と準備を整えてきた。
 交通渋滞解消に向けた道路整備などに加え、総合体育館や図書館建設の検討といった他候補との違いも打ち出す。「地域の声を県に届けられる」と県とのパイプも強調。「民間目線を生かし、町民のための町長を目指す」と息巻く一方で「組織票が薄い分、浮動票獲得が鍵」(陣営関係者)と不安ものぞかせる。
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 一騎打ちと思われた争いに割って入ったのが、経営コンサルティング会社代表の小西候補。兵庫県出身で、全国の市町の首長選を検討する中で「リストアップしていた」と告示直前に出馬を決意した。先月投開票された三重県松阪市長選を皮切りに、首長選はこの2カ月間で4戦目となる。
 時津町に来たのは今回が初めて。「外で経験してきた人間の可能性を感じてほしい。時津を町から市に変えたい」と言い切る。街宣活動には力を入れず、選挙ポスターや選挙公報でアピールするが、出遅れ感は否めない。
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 保守系前町議2人に県外出身1人という構図に町民からは困惑の声も聞かれる。70代女性は「(山上、山脇両候補は)年齢も経験も政策も似たり寄ったり。3人目が出てさらにややこしくなった」。一方、自民党関係者も「禍根を残さないためにも、推薦は山上、山脇両者とも町支部レベルにとどめた。二分された戦いもきつい」と実情を明かす。
 時津町は面積20.94平方キロと県内最小の自治体。山上、山脇両候補は選挙カーで町内をくまなく回り支持拡大を図っている。投票率は16年前が54.36%で、4月の町議選は44.68%。両陣営は交流サイト(SNS)を駆使した空中戦でもしのぎを削る。
 選挙人名簿登録者数は2万3886人(男1万1119、女1万2767)=23日現在、町選管調べ=。

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