食品スーパー事業から撤退「トーホー」の次はどこ

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業務用食品卸大手のトーホー<8142>は傘下のトーホーストア(神戸市)が兵庫県内で29店舗を展開する食品スーパー事業から撤退する。競争の激化に伴い事業規模が縮小し厳しい状況が続いていたため、業務用食品卸売事業に経営資源を集中させることにした。

2024年11月までに元資本業務提携先のバローホールディングス<9956>に13店舗を売却し、残りの16店舗は2025年1月までに閉鎖する。

信用調査会社の帝国データバンクによると、食品スーパー事業を手がける約1100社のうち、31.3%にあたる349社が赤字に陥っており、減益(37.5%)の企業を合わせると、業績悪化の割合は食品スーパー全体の70%ほどに達するという。

食品の値上げラッシュの中、十分な販売価格への転嫁ができていないのに加え、光熱費や人件費などのコストが上昇しているためで、食品スーパーの売却や閉店は今後も続きそうだ。

7億円強の経常赤字に

売却するのは、バローホールディングスの傘下企業で、食品スーパーの八百鮮(大阪府吹田市)に3店舗、食品スーパーのヤマタ(同)に2店舗、ドラッグストアの中部薬品(岐阜県多治見市)に8店舗。閉鎖するのは六甲アイランドやポートアイランド、明石小久保などの店舗だ。

トーホーストアは、1963 年に神戸市に出店して以来、店舗数を増やし1980年代後半は69店舗を展開し、トーホーグループ内の売上高構成比は約40%と経営の一つの柱になっていた。厳しい競争の結果、2023年1月期の売上高構成比は7.5%にまで低下。経常損益は7億3800万円の赤字に陥っていた。

一方、トーホーの業績は好調で、2024年1月期の売上高は2390億円(前年度比10.9%増)、営業利益は65億円(同78.1%増)と大幅な増収営業増益を見込む。コロナ禍の影響が薄らぎ外食産業の景況感が上向いているのに加え、新規顧客の獲得などが進んだことから、これまでに2度2024年1月期の業績予想を上方修正している。

2024/1は予想

関西圏での事業拡大に期待

バローホールディングスは中部地区を中心に食品スーパーやドラッグストア、ホームセンターなどを運営している。2015年にトーホーストアと資本業務提携を結ぶ(2023年3月に解消)など、トーホーストアの事業に理解があったことから、買収に踏み切った。これによって、関西圏での事業拡大が期待できるとしている。

買収する13店舗の2023年1月期の売上高は77億4800万円で、営業損益は3億6900万円の赤字だった。バローホールディングスの2024年3月期の売上高は前年度比1.6%増の7720億円、営業利益は同2.2%増の205億円を見込む。

苦境続く食品スーパー

帝国データバンクによると、食品スーパーの40%超が食品などの値上げに対して「50%以上」の価格転嫁ができているものの、水道光熱費や人件費などの上昇については価格転嫁できない食品スーパーが多い。

また、ディスカウントストアやドラッグストアなど他業態のからの参入や、大手スーパーや量販店などの割安なPB商品との競争などで利益が大きく悪化したケースが目立つという。

食品スーパーの苦境はまだまだ続きそう。トーホーの次ぎの撤退企業が表面化するのは、そう先ではないかもしれない。

文:M&A Online

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