琉球ゴールデンキングスのEASL2023-24開幕戦レビュー——ソウルSKナイツとの再戦前に振り返るべき5つのポイント

東アジアスーパーリーグ(EASL)の2023-24シーズンでの琉球ゴールデンキングスは、10月18日にホームの沖縄アリーナで行われた開幕初戦でソウルSKナイツを80-79で下し、白星発進に成功した。次戦は同じソウル相手で、11月1日(水)にアウェイのコヤン・ソノ・アリーナ(韓国、高陽市)で対戦することになっている。その一戦を前に、激闘となったソウルとの初戦を、5つのポイントを挙げて振り返ってみたい。

1. 第4Q、沖縄アリーナを沸かせたルーズボール
この試合で勝負に大きな影響を及ぼしたプレーの一つに、第4Q開始から約55秒後のハッスルプレーがあった。琉球が63-58と5点リードした状況で、カール・タマヨが右ウイングから3Pショットを試み、リムにはじかれロングリバウンドとなったところからの一連のプレーだ。

今村佳太はチームハイの18得点だったが、それ以外の部分でも光る活躍を披露していた(写真/©EASL)

リムにはじかれたボールはハイポスト付近で今村の手に当たってベースラインの外にはずんでいった。しかし今村はそれを追いかけて全力でダイブ。すでにベースラインの外に飛び出していたボールを右手ですくい上げ、左ショートコーナー付近にセーブした。そのボールにアレックス・カークとソウルのソン・チャンヨンが、猛然とコートに転がって食らいつく。

コントロールしたのはカークの方。がっちりボールをつかんだカークが左ウイングに待つ小野寺祥太にボールを渡すと、さらにタマヨ、牧 隼利と素早いスイング・アクションでボールは右ウイングへ。右コーナーにはすでに今村が、「さあ、こい!」と言わんばかりにキャッチ&シュートの準備を整えていたが、牧は相手ディフェンスの様子を見てもう一度サイドチェンジを選択。ボールはタマヨ、小野寺と逆サイドに展開され、左ローポストでポジションをとったカークの手に戻る。最後はカークのフローターが決まり、琉球のリードは65-58の7点差に広がった。

あと0.1秒でも反応が遅かったらつなぐことができなかっただろうボールを今村がつなぎ、コート上の5人全員のボールタッチを経て奪った得点で、沖縄アリーナは大歓声に包まれた。このプレーがなかったら負けていたとまでは言えないにしても、1点差の勝利ということを思うと、このプレーには特別の重みがあった。琉球のウィニング・バスケットボールをEASLで世界に見せつけた意味でも、その価値は非常に大きかったはずだ。

2. 3Pショット不発の岸本隆一、ソウルでの奮起に期待
岸本隆一はこの試合で、相手の股間を抜くストリートボールのような妙技を披露するなど、大観衆を盛り上げた。ただ、持ち味とする3Pショットが6本すべてミスに終わった点と、ターンオーバーを3つ犯したのは悔しかっただろう。

岸本隆一のロングレンジゲームがソウルで本来の威力を発揮できるようだと琉球にとっては非常に心強い(写真/©EASL)

Bリーグの2023-24シーズンでは、10月29日までの9試合で34.0%の3P成功率(50本中17本成功)を残している。琉球はその時点まで7勝2敗だが、岸本の3P成功率は勝った7試合で38.1%(42本中16本成功)に対し、負けた2試合で12.5%(8本中成功は1本のみ)と対照的。EASLでの次戦では、岸本が当たりを取り戻すかどうかも勝敗を左右する要素になる。

ソウルのディフェンスは高い位置からプレッシャーをかけ、岸本に楽にボールを持たせなかった。この試合を欠場したKBLを代表するスターガードのキム・スンヒョンも出てくるだろう次の対戦で、岸本がソウルのディフェンスをいかにして打ち破るか。そうでなくてもソウルは岸本を放っておくわけにはいかない。この勝負は熱い。

3. 今村佳太とヴィック・ローのクラッチプレー
琉球のトップスコアラーは18得点を挙げた今村佳太。パリオリンピックでの日本代表入りを視野に捉えながら臨んでいる今シーズンの意識の高さが強く感じられた活躍だった。特に印象深いのは第4Qの活躍で、前述のルーズボールあり、残り2分を切ってから74-74の同点に追いつくディープスリーありと、今村のプレーが沖縄アリーナを熱狂の渦に巻き込んでいた。

その今村がファウルアウトしたのは残念だったが、最後に試合を決めたヴィック・ローのドライビング・レイアップとアンドワンのフリースローも、勝負強いミスター・クラッチぶりをファンの胸に焼きつけるものだった。ローはこの試合の3日前、サンロッカーズ渋谷とのアウェイゲームでも、第4Q残り5.5秒に逆転ミドルジャンパー(およびアンドワンのフリースロー)を沈めたばかり。千葉ジェッツの一員として琉球相手に戦った昨シーズンのBリーグファイナルGAME1で、延長に持ち込む同点3Pショットを決めたシーンを覚えているファンも多いに違いない。

勝負強さを発揮したヴィック・ロー(写真/©EASL)

残念なことに、ローは左膝蓋靭帯炎の診断で10月24日からインジュアリーリスト入りしている。全治見込みは4週間でEASL第2戦の出場は難しそうだが、だからこそ、ソウルでは今村の活躍に期待したくなる。

4. リバウンド争いは負けていられない
Bリーグ2022-23シーズンのベストリバウンディングチーム(平均42.0本)だった琉球は、ジャック・クーリーと渡邉飛勇を欠いた状態で戦う今シーズン序盤戦では、前シーズンと同等といえるまでのリバウンド力を出せていない。

ジャミル・ワーニーは得点力もすごかったがリバウンドでも強烈だった(写真/©EASL)

ソウルとのEASL開幕戦ではローが13本、カークが12本と奮起して38-35と上回った。しかしオフェンスに限ると12-13と獲り切れず、結果としてジャミール・ワーニー(199cm)とレオン・ウィリアムズ(198cm)に10リバウンドずつを許し、セカンドチャンスで失点を重ね苦しんだ。アウェイでの次戦ではここも間違いなく勝負のポイントになるだろう。

5. ソウルSKナイツの魅力と手ごわさ
ワーニーは、過去の実績が示すとおりの強烈なフィニッシャーぶりをあらためて印象付けた。40分間フル出場で、フィールドゴール33本中17本を成功させての39得点。琉球ディフェンスがワーニーに身長211cmのカークをマッチアップさせ、ある程度ロングレンジとミドルレンジで自由を与えていたとはいえ、やはり彼は大きな脅威だった。

リバウンドの項で触れたウィリアムズもここぞの場面でねじ込むプットバックが力強い。後半切れ味の良いドライブや速攻から得点を重ねたファン・ゴメス・デ・リアニョの、スピード感に満ちたプレーも光った。彼はこの試合で7本の3Pアテンプトすべてをミスしたが、これは沖縄アリーナの力かもしれない。敵地で同じように打たせるわけにはいかない。

ファン・ゴメス・デ・リアニョのドライビング・レイアップ(写真/©EASL)

激戦必至のソウル対決は見逃せない

KBLでのソウルSKナイツは10月29日までに5試合を消化し、3連勝後2連敗してEASL第2戦に臨むという状況だ。ワーニーとキム(ス)はそれぞれ、ワーニーが平均得点34.0がリーグトップタイ、キム(ス)も平均7.0アシストがリーグ2位タイの好成績。琉球にとっては、二人がそろった状態でアウェイで戦う11月1日の再戦は、前回と異なるチャレンジになりそうだ。

桶川 大HCは前回の試合後会見で、徹底的にワーニーにボールを集めて攻めてくるソウルのスタイルに対する戸惑いもあったことを明かしていた。キム(ス)が出てくることで攻め方にどんな変化があるか、あるいはないのか。

琉球サイドでは、前回は不在だったクーリーが出場できローが出られない状況と思われる中で、二人しか登録できない外国籍プレーヤーをどんな顔ぶれにするか興味深い。前回はアレン・ダーラムが登録外だったが、機動力とフィジカリティーを兼ね備えたダーラムをワーニーにぶつける手も、クーリーとカークをそろえてサイズのアドバンテージを強調することも考えられる。

また、故障で前回出場できなかったキャプテンの田代直希も28・29日の富山グラウジーズ戦で復帰済み。タイトな日程の国外遠征で登録される12人の顔ぶれはどうなるだろうか。激戦必至のソウル決戦は楽しみな見どころに満ちている。

EASL公式サイト(ソウルSKナイツ vs 琉球ゴールデンキングス対戦情報ページ)

10月18日開催の琉球ゴールデンキングス vs ソウルSKナイツ戦ハイライト映像

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